LANCIA Delta HF Integrale Evoluzione '91の公式解説
元々ランチアデルタは、ジウジアーロがデザインしたファミリ一向けハッチバックだった。ところがグループBによるWRCが中止となり、ランチアがグループAのベースモデルにデルタを選んだ瞬間から、その運命は大きく舵を切ることになった。
ランチアは1987年、デルタに高性能ターボエンジンと4WDを与えてWRCにデビューさせる。この年からデルタは前人未踏のWRC6連勝を記録することになるが、それは同時に絶え間ない進化を義務付けられたラリーマシンの厳しい歴史でもあった。
91年、ライバルのトヨタに肉薄されつつあったランチアは、フランクフルトショーで究極のデルタを発表する。これがHF Integrale Evoluzioneである。
Evoluzioneはフロントマスクの開口面積を拡大。同時にボンネットの通気口も拡大して、エンジンルーム内の放熱性を高めていた。その結果、パワーは従来の200.1PSから210.1PSへと向上した。
足まわりではトレッドを60mm拡大させた点がトピック。アイデンィティだったブリスターフェンダーはさらに張り出し、全幅は1,770mmまで広くなっている。さらに4WDの前後トルク配分をリア寄りとし、FRらしい挙動を示すようになった。ルーフエンドには大きく立ち上がるスポイラーを設置、ダウンフォースを生み出す仕組みも取り入れている。
このEvoluzioneは翌年92年のWRCにデビューし、見事連勝記録の更新に貢献した。しかし親会社のフィアットがランチアのWRC撤退を決定、Evoluzioneの活躍はこの年が最後となったのである。