ALPINE A110 1600S '72の公式解説
RRレイアウトの強烈なトラクションと超軽量ボディを武器に一時代を築いたスポーツカーが、アルピーヌ A110だ。1963年、わずか1.1LでデビューしたA110は戦闘力強化のため年々排気量を拡大していくが、1968年にはその到達点ともいえる1600Sが登場する。1600Sは当初ルノー16用の1,565ccエンジンを搭載したが、1973年にはルノー17用1,605ccヘエンジンを換装、あわせてリアサスペンションのダブルウィッシュボーン化やタイヤサイズの小径化を行ない、それまでのA110とは一線を画する乗り味を獲得した。
この時期のアルピーヌは国際ラリーで連戦連勝を重ねていたが、排気量による改造制限を逃れるために、あえて1,600ccをわずかに超える1,605ccという排気量を選んだ。こうすれば、より大排気量のライバルを相手にする代わりに、大幅なチューンナップが許されたからだ。実際そういったライバルたちを相手に、A110は大活躍を演じた。
1600Sにはさまざまなバリエーションがあるが、代表的なものは3種類。まずはウェーバー製の45DCOEキャブレターを2基装備したフランス国内向けの1600SC、次が電子制御燃料噴射を搭載した輸出向けの1600S1だ。この2台は最高出力が140PS/6,000rpmで、5速MTを介して最高速度は210km/hに達した。1,600ccのクルマとしては驚異的な数値だが、それには700kg台という軽量ボディが大きく貢献した。
残る1台は1976年に発売された1600SXだ。この1600SXはエンジンをデチューンして95PS/6,000rpmとしたため、最高速度も190km/hまで落ち込んでしまったが、その分乗りやすさが向上しており、モータースポーツに縁のないユーザーには歓迎された。
A110は次期モデルのA310が1971年にデビューしたあとも人気が衰えなかった。結局モデル合計で7160台が作られ、1977年に生産を終えた。