RENAULT R5 (cinq) Turbo '80の公式解説
1978年のパリ・モーターショーに、ボディパネルを外した状態で展示され、話題を集めたのがルノーR5 (サンク) Turboだ。WRC、世界ラリー選手権参戦のためのプロトタイプで、1980年から市販が開始された。
R5 Turboは、ボディシェルこそルノー5ではあったが、ターボで増幅されたパワーを有効に路面に伝えるため、オリジナルモデルの前輪駆動方式を捨て、エンジンやトランスミッション、ディファレンシャルにいたるまで、パワートレインのすべてを後部車軸の上に移動したミッドシップマシンヘと変貌していたのだ。
エンジンは1,397ccの水冷直列4気筒OHVという小さなものだったが、ボッシュ製Kジェトロニック燃料噴射装置とギャレット製ターボチャージャー、空冷式インタークーラーにより最高出力162PS、最大トルク22.5kgfmにまで増強された。ベーシックな5に比べてパワーで1.5倍、トルクでは実に3.3倍という大幅なパワーアップだ。
当然シャシーやボディにも大幅な強化が施された。特にワイドタイヤを装着するために拡げられた前後のフェンダーは、このクルマに圧倒的な迫力を与えることとなった。さらにリアゲート上部には大きなエアスポイラーがつき、フロントにも大型のエアダムが与えられた。
こうした大改造の結果、970kgのボディが生み出すパフォーマンスは、最高速度200km/h、0-400m加速15秒、0-1,000m加速28秒という驚異的なものとなった。R5 Turboは1980年のコルシカでWRCにデビュー、翌年のモンテカルロで初優勝を遂げた。以後、数々のイベントで猛威をふるい、ルノーの名をWRCに焼き付けたのである。