
三菱 ランサーエボリューションV GSR(CP9A)とは、三菱自動車が1998年1月に発売した5代目ランサー(CB/CD系)をベースにしたハイパフォーマンス4WDセダンで、ランエボ史上初の3ナンバーワイドボディを手に入れた記念すべき一台です。4G63型 2.0L 直4 DOHCターボ・280PS・フルタイム4WD。WRCではトミ・マキネンがEvo Vで1998年ドライバーズ3連覇を達成し、同じ1998年シーズンには三菱にとって悲願のマニュファクチャラーズ(製造者)タイトル初獲得という歴史的快挙も同時に成し遂げられました。
この記事では、Evo Vの魅力・スペック・中古相場から、GT7での乗り方、そして「なぜワイドボディ化したのか」という開発背景と1998年WRC初制覇の物語まで、まるごと解説します。
Evo V誕生|ランエボ史上初のワイドボディとその理由
ランサーエボリューションの歴史がⅠ、Ⅱ、Ⅲと積み重なり、大きな転機を迎えたのは1996年8月。ベースとなるランサーのフルモデルチェンジに伴い、第2世代となるランエボⅣが登場しました。4G63型エンジンは左右反転搭載となって280PSを達成、リアデフには電子制御AYC(アクティブヨーコントロール)を新採用するなど、大きな進化を遂げた一台でした。
そのおよそ1年半後、1998年1月26日に登場したのがランエボⅤです。型式はGF-CP9A。外観の変化はひと目瞭然で、ランエボ史上初となる3ナンバーの幅広ボディを手に入れました。全幅はEvo IVの1,690mmから1,770mmへと一気に拡大。フロントトレッドは1,470mmから1,510mm(+40mm)、リアトレッドも1,470mmから1,505mm(GSR値・+35mm)へと広がっています。
「なぜ、そこまでしてワイド化する必要があったのか」。ここにEvo V固有の、興味深い開発ストーリーがあります。
1997年、FIA(国際自動車連盟)は「WRカー(World Rally Car)」規定という新しいカテゴリーを新設しました。これは、年間2.5万台以上生産する市販車をベースにすれば、ターボの搭載や駆動方式の変更まで自由化されるという、大幅に緩和されたルールです。しかもベース車自体は年間2,500台の生産で構わないという条件付きで、事実上「市販車の形をした専用競技車」を各メーカーが作れるようになったのです。
これに対し三菱は、あえて従来のグループA規定での参戦継続を選びました。グループA規定は、12ヶ月で5,000台以上の生産が必須で、エンジンや空力パーツの変更も原則不可という、はるかに厳格なルールです。「ラリーで培った技術を、より多くの市販車にそのまま還元する」という三菱の姿勢がここに表れています。
しかし、この選択は同時に大きな課題も生みました。WRカー規定で自由に武装したライバル勢に対し、三菱は「ベース車そのものの実力」だけで走行性能・制動性能を引き上げなければならない立場に追い込まれたのです。その答えが、全幅1,770mmへの拡大とトレッドの拡大でした。太いタイヤをしっかり支え、コーナリング性能とブレーキング性能を底上げする。ワイドボディ化は、三菱にとって選択の余地がない「必然」だったといえます。
- WRカー規定(1997年新設):年産2.5万台以上の市販車がベース。ターボ・4WD化などが原則自由。ベース車は年2,500台生産でも可
- グループA規定(三菱が継続選択):12ヶ月で5,000台以上生産必須。エンジン・空力パーツの変更は原則不可
- 結果:三菱はベース車の素の実力を引き上げるしかなく、ワイドボディ化・トレッド拡大という方向に活路を見出した
ボディ以外にも、Evo Vには数多くの改良が施されています。まず目を引くのが、新形状の迎角調整式アルミ製大型リアスポイラー(デルタ型ウィッカー付き)。複数の海外専門メディアでは「4段階の迎角調整が可能」とも紹介されていますが、この点は日本語の一次資料では詳細を確認しきれておらず、参考情報として留めておきます。
制動面ではブレンボ製対向ピストンブレーキが標準装備となりました。フロントは17インチ径4ポッド、リアは16インチ径2ポッドで、ガルファー社製のパッドが組み合わされています。フロントバンパー・ボンネットまわりも風洞実験を経て新設計され、エアインテークが大型化。冷却効率の向上が図られました(こちらも複数の海外専門サイトが指摘している内容で、日本語一次資料での詳細確認は限定的です)。
足まわりは、フロントに倒立式のマクファーソンストラット、リアはマルチリンク式でジオメトリーが変更されています。心臓部の4G63型エンジンも見逃せません。ツインスクロールターボ自体はⅠ〜Ⅲの時代から採用されてきた既存の機構ですが、Evo Vではノズル面積の拡大という改良が加えられ、最大トルクが36.0kgf・mから38.0kgf・mへ(+2.0kgf・m)向上しています。最高出力は280PS/6,500rpmで据え置きとされ、パワーよりもトルク重視のチューニングが行われた形です。
ちなみに、この公表280PSという数値についても興味深い指摘があります。当時の日本車メーカー間には「280馬力自主規制」という紳士協定が存在しており、複数の海外メディアは「実際の出力は公表値より高かったのではないか」と推測しています。あくまで伝聞・推測の域を出ない情報ですが、当時の時代背景を物語るエピソードとして紹介しておきます。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 型式 | GF-CP9A |
| 発売日 | 1998年1月26日 |
| エンジン | 4G63型 2.0L 直4 DOHCターボ |
| 最高出力 | 280PS/6,500rpm(据え置き) |
| 最大トルク | 38.0kgf・m/3,000rpm(Evo IVの36.0kgf・mから向上) |
| 駆動方式 | フルタイム4WD |
| 全幅 | 1,770mm(Evo IVの1,690mmから拡大・ランエボ史上初の3ナンバー) |
| トレッド(前/後) | 1,510mm/1,505mm(GSR値・Evo IV比+40mm/+35mm) |
| ブレーキ | ブレンボ製対向ピストン(前17インチ4ポッド/後16インチ2ポッド) |
| 主要グレード | GSR/RS |
出典・参考:三菱・ランサーエボリューション(Wikipedia)(Evo V諸元・ワイドボディ化の経緯)/World Rally Car(Wikipedia英語版)(WRカー規定の内容)/複数の海外自動車専門メディア(リアスポイラー・エアインテーク形状の解説)。※最高出力の実態に関する紳士協定の指摘は伝聞情報であり、断定はできません。
当時のキャッチコピーは「V(ご)次元の、瞬発力」。数字の「5」と技術の「次元」を掛け合わせた語呂合わせで、まさにEvo Vというモデル名を体現する一言でした。海外の自動車メディア(Influx・Adrian Flux)は、Evo Vの外観についてこう評しています。
出典・参考:海外自動車専門メディア(Influx・Adrian Flux)による評価:"the EVO V looked like a rolling street fight"(Evo Vは、まるで動く喧嘩のように見えた)。攻撃的な面構え・大型リアウイングを含めた外観全体への評価として紹介。
Evo Vは、WRC参戦のためのホモロゲーションスペシャル(グループA公認を得るための市販車)という明確な位置づけを持った一台でした。次の章では、その中古相場を見ていきましょう。
Evo Vは今いくら?"まだ手が届く"ランエボの相場
ランエボⅣ/Ⅴ/Ⅵ全体では、90年代国産ターボ4WDの高騰の波に乗り、価格が大きく上昇しています。参考までに、ランエボⅣ〜Ⅵ全体の相場推移は2019年1月時点の平均123.7万円から、2021年12月には平均312.8万円へと、わずか3年で約2.5倍にまで跳ね上がりました。
2026年7月時点でEvo V(CP9A)単体の相場を中古車ポータルで確認すると、次のような状況です(あくまで掲載時点の目安・個体差で大きく変わります)。
- goo-net:掲載13台・248万〜611万円(平均259.8万円・300〜500万円帯に集中)
- carsensor.net:掲載9台・189.0万〜479.9万円
- 全体の目安:おおむね190万円台〜600万円台のレンジに収まる
ここで押さえておきたいのが、同じランエボ系の中での立ち位置です。マキネンの名を冠した限定モデル「T.M.Edition」(ランエボⅥ)は、すでに1,000万円超級という別格の高騰ぶりを見せています。それに対しEvo Vは、ランエボの中では"まだ手が届く"価格帯に踏みとどまっているという見方ができます。とはいえ生産から四半世紀以上が経過した希少な旧車であることに変わりはなく、状態の良い個体は今後も価格が上昇していく可能性があります。
出典・参考:goo-net(2026年7月時点・Evo V掲載13台・248万〜611万円)/carsensor.net(2026年7月時点・Evo V掲載9台・189.0万〜479.9万円)/90年代ターボ4WD市場動向(2019年1月〜2021年12月の相場推移)。
※中古車相場は2026年7月時点の中古車ポータル掲載情報に基づく参考値です。個体差・状態・走行距離・時期によって大きく変動します。最新の価格・在庫は各中古車ポータルで必ずご確認ください。
なお、新車時の価格はGSRグレードが300万円台前半、RSグレードが260万円前後とされています(新車カタログの一次資料では確認できず、複数の二次情報に基づく参考値です)。生産台数についても「限定6,000台」という情報が見られますが、これも単一の情報源によるもので、断定的な数字としては扱えません。あくまで目安として捉えてください。
「GT7で惚れて、いつか本物のEvo Vに」。その前に、いま乗っている愛車の“本当の価値”を知っておきませんか。旧車相場が動いている今は、手放す側にとっても追い風です。
※査定額・中古相場は車種・年式・走行距離・時期によって変動します。実際の金額は査定でご確認ください。
グランツーリスモ7のEvo V|PPで見る"進化の系譜"
グランツーリスモ7には、「Lancer Evolution Ⅴ GSR (CP9A) '98」(kudosprime収録ID:274)が収録されています。入手方法はUsed Cars(中古車)です。
- PP:483.25
- 馬力:306HP(4WD・GT7内補正値)
- 重量:約1,360kg(実車カタログ値とほぼ一致)
- ゲーム内価格:約67,100Cr
- 入手方法:Used Cars(中古車)
PP値については「523.14」という別の数値も一部のデータベースで見られますが、この記事ではkudosprime公式値である483.25を優先して紹介します。GT7はアップデートで数値が変動することがあるため、いずれにせよ「バージョンにより変動あり」と捉えておくのが安全です。
Evo Vの面白いところは、同じランエボ系の中でPP値を並べてみると、段階的に数値が上がっていく"進化の系譜"がはっきり見えることです。beach-tree.mobiで紹介済みの車種と合わせて比較してみましょう。
| 車種 | PP | 馬力 | 重量 | ゲーム内価格 |
|---|---|---|---|---|
| Evo IV GSR '96 | 467.12 | 273HP | 2,976lbs(約1,350kg) | 約45,300Cr |
| Evo V GSR '98(本記事) | 483.25 | 306HP | 2,998lbs(約1,360kg) | 約67,100Cr |
| Evo VI T.M.SCP '99 | 505.66 | 311HP | 2,998lbs(約1,360kg) | 約162,400Cr |
ご覧の通り、PP値はEvo IV(467.12)→ Evo V(483.25)→ Evo VI T.M.SCP(505.66)と、きれいに段階を踏んで上昇しています。馬力も273HP→306HP→311HPと着実に伸びており、GT7というゲームの中でも、実車の開発史そのままの"正当進化"が数値として再現されているのが分かります。ゲーム内価格の跳ね上がり方(4.5万Cr台→6.7万Cr台→16万Cr台)を見ても、Evo Vが「IVからの正常進化」と「VI・T.M.Editionという別格の存在」の、ちょうど中間に位置していることがうかがえます。
また、GT7には「エボリューション・ミーティング」というPP制限なしのランエボワンメイクイベントも収録されています(2024年10月3日のv1.52アップデートで追加)。コロラドスプリングス・モンツァ・京都ドライビングパークの3コースが舞台で、Evo Ⅲ〜Finalまでの歴代モデルが一堂に会するイベントです。もちろんEvo Vもエントリー可能で、歴代ランエボ乗りたちと同じ舞台で腕を競い合えます。
出典・参考:kudosprime(GT7収録車種データベース・PP483.25・306HP・約1,360kg・約67,100Cr)/GT7公式アップデート情報(v1.52・エボリューション・ミーティング追加)。※PP値には523.14という別説もあり、記事内ではkudosprime公式値を優先しています。
※クレジット価格・PP値・入手条件はゲームのアップデートで変動します(数値は2024〜2026年時点の攻略情報)。最新はゲーム内でご確認ください。
ハンコンで乗るともっと気持ちいい|機材ガイド
GT7でEvo Vをさらに楽しむなら、ハンドルコントローラー(ハンコン)がおすすめです。自分でハンドルを握る感覚は、コントローラーとは別物。ワイドボディがもたらす安定感とグリップ力が、グッと現実に近づきます。ここでは、GT7を“実車感覚”で楽しむための機材を「まず必須」と「あるとより楽しい」に分けて紹介します。
<まず必須>これがあれば、すぐにGT7で走り出せる
GT7を遊ぶ土台です。
PS5本体・GT7ソフト・ディスクドライブがあれば走り出せます。
さらにハンコンを足せば、“自分でハンドルを握る”運転体験に。
<あるとより実車に近づく>足すほど没入感が一段ずつ上がる
ここから先は“より実車に近づく”ための投資。
コックピットで姿勢が決まり、シフトで操作感が増し、VRで視界ごと没入できます。
※機材価格・在庫は時期・モデルによって変わります。最新の金額は各販売店でご確認ください。
📶 オンライン対戦も楽しむなら|回線も“快適”に
GT7の醍醐味のひとつが、世界中のプレイヤーと走れるオンライン対戦です。
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※特典・料金は時期により変わります。最新は各公式サイトでご確認ください。
実車を維持する vs ゲームで乗る|コスパ比較
① 実車Evo Vを所有・維持する費用
Evo Vは1998年デビューの旧車。
維持費は現行車より高めになりがちです(部品の希少化、13年超の自動車税の重課など)。
年間の目安はこのくらいです。
| 項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 自動車税(2.0L・13年超の重課) | 約51,700円 |
| 任意保険 | 約8〜15万円 |
| 車検(2年分を1年換算) | 約6〜9万円 |
| 整備・部品(4WDターボ・部品希少化) | 約15〜30万円 |
| 駐車場(地域差大) | 約0〜36万円 |
| 燃料・消耗品(ハイオク・4WD) | 約15〜25万円 |
| 年間合計(目安) | 約50〜85万円 |
さらに、購入費が約190万〜600万円台(前章の中古相場)かかります。
② GT7で“実車感覚”を味わう機材コスト
一方、GT7でEvo Vを「実車感覚」で走らせる機材は買い切り(初期費用のみ)。
一度そろえれば、あとは電気代くらいです。
| 機材 | 価格の目安 |
|---|---|
| PS5本体 | 約6.6〜8万円 |
| グランツーリスモ7(ソフト) | 約6,000〜9,000円 |
| ハンドルコントローラー(エントリー) | 約2.5〜4万円 |
| レーシングコックピット(任意) | 約2〜5万円 |
| PS VR2(任意・没入感アップ) | 約7.5万円 |
| 一式(目安) | 初期 約10〜25万円+以降ほぼ0 |
③ コスパ比較の結論
- 実車:初期 190〜600万円台 + 毎年 50〜85万円
- ゲーム:初期 10〜25万円 + 以降ほぼ0
ゲーム機材一式は実車のたった1年分の維持費以下でそろい、しかも事故・盗難・天候の心配なし。ハンコン+VRを使えば、ワイドボディがもたらすグリップ感や、コーナーでの荷重移動まで、かなり実車に近い感覚で走れます。
「いつか本物のEvo Vを」と思っている人も、それまでの間はGT7で愛車に乗り続けられます。
まずはハンコンから始めるのが、一番コスパよく“実車感覚”に近づく方法です。
さらに没入感を求めるならVRも。
実車のEvo Vに触れる|借りて乗る・集まる
「中古でも手が出ない」「買う前に一度ハンドルを握ってみたい」。Evo Vは数が減っていますが、近い体験ができる方法は探せば見つかります。
🔑 借りて乗る|Evo V単体のレンタルは要問合せ
旧車専門のレンタカーを調べてみると、「おもしろレンタカー野田本店」(千葉県野田市)はVI・VII・VIII・IX・X中心のラインナップでEvo V(CP9A)は確認できませんでした。「カーレンタル東京」もEvo IX MRのみの取り扱いで、こちらもEvo Vではありません。
現状、Evo V単体を扱うレンタカー業者は確認できていないというのが正直なところです。個体の希少性を考えると無理もない状況ですが、「レンタルできない」と断定できるわけではなく、各業者への直接の問い合わせをおすすめします。新規の取り扱いが始まっている可能性もあります。
出典・参考:おもしろレンタカー野田本店・カーレンタル東京の公式ラインナップ情報(2026年7月時点・いずれもEvo V単体の取り扱いは確認できず)。※レンタカーのラインナップは変動します。最新は各社公式でご確認ください。
🏁 集まる・見る|個人オーナーの撮影会に見るEvo Vの今
Evo V単体をテーマにした大規模イベントの情報は多くありませんが、個人オーナーの愛車が紹介される「GAZOO愛車広場」の出張撮影会には、Evo Vの実例がいくつか見つかります。
「in長浜」(2019年3月17日・滋賀県のウッディパル余呉)では、40代男性オーナーの1998年式Evo Vが登場。通勤利用からサーキット走行へと役目を変えながら、走行距離は14万km超に達しているといいます。
もう一例が「in愛知」(2019年10月20日・トヨタ博物館/愛知県長久手市・118台参加)。こちらも40代男性オーナーが所有するEvo V(CP9A・1998年式・ラベンダーパープルの全塗装)で、21年間所有し続け、サーキットマシンとして維持。7万km走行時点でエンジンオーバーホールなどの改修歴もあるといいます。ランエボ全世代が集うようなイベント自体は各地で開催実績がありますが、Evo V個別の参加状況までは裏取りできていません。
出典・参考:GAZOO愛車広場「出張撮影会」レポート(in長浜2019年3月17日・in愛知2019年10月20日)。個人オーナーの実名は伏せて紹介しています。※撮影会は不定期開催のため、最新の開催情報は公式でご確認ください。
1998年、三菱悲願のマニュファクチャラーズ初制覇
三菱がWRCで史上唯一のマニュファクチャラーズ(製造者)タイトルを獲得したのが1998年シーズンであることは、よく知られています。ここでは、その1998年に至るまでの道のりと、Evo Vが実際にどう戦ったのかという“中身”を詳しく見ていきましょう。
まず前年の1997年シーズンを振り返ります。この年はFIAが新設した「World Rally Car」規定の導入初年度でした。トミ・マキネンは、まだEvo IVを駆って全14戦中4勝(3月ポルトガル・4月カタルーニャ/スペイン・5月アルゼンチン・8月フィンランド)を挙げ、獲得63ポイントで2位のコリン・マクレー(Subaru)にわずか1ポイント差という大接戦を制し、2年連続のドライバーズチャンピオンに輝きました。
ただし、マニュファクチャラーズ(チーム)選手権では、Subaruが優勝、Fordが2位、三菱は3位という結果に終わっています。マキネン個人は勝てても、チームとしての王座には届かなかった。これが、翌1998年のEvo V投入への大きな伏線となりました。
いよいよ1998年シーズン(全13〜14戦)です。Evo Vの実戦投入は、第4戦ラリー・カタルーニャ(1998年4月)からでした。それ以前の3戦は、まだEvo IVでの参戦だったのです。市販車の発売が1998年1月26日でしたから、ホモロゲーション取得から実戦投入までの期間を考えると、この投入タイミングは自然な流れといえます。
Evo Vに乗り換えたマキネンは、シーズンを通じて通算5勝を積み重ねました。アルゼンチン(3年連続優勝)・フィンランド・サンレモ・オーストラリアなどが主な勝利です(なお、シーズン序盤の車両表記についてはIV/V混在の情報もあり、たとえばスウェーデン戦はEvo IV参戦説もあるため、この点は確定情報として扱わず参考に留めます)。チームメイトのリチャード・バーンズも2勝(サファリ初優勝・最終戦RACラリー)を挙げ、三菱チーム全体としても勢いに乗っていました。
そして迎えた最終戦・RACラリー(イギリス)。ここで、シーズンを締めくくるドラマチックな出来事が起こります。トヨタのカルロス・サインツの車両が、ゴール手前わずか約300mという地点でメカニカルトラブルにより脱落したのです。この土壇場の脱落によって、タイトルの行方は劇的にマキネンへと転がり込みました。
最終戦を前に、タイトル争いは複数選手による大接戦の様相を呈していました。決着をつけたのは、トヨタのカルロス・サインツ車がゴールまであと約300mという地点でメカニカルトラブルにより無念のリタイアとなった一幕。この土壇場の出来事が、マキネンの3連覇達成を決定づけました。ラリーというスポーツの過酷さと、勝負の綾を象徴する一戦です。
この結果、マキネンは最終ポイント58点で、史上初となるドライバーズ3連覇を達成しました。フィンランド・サンレモ・オーストラリアでの3連勝が、この歴史的な記録の決定打になっています。
そして、この1998年シーズン最大の成果がマニュファクチャラーズ選手権(チーム部門)での初優勝です。三菱チームはシーズン合計7勝・勝率50%という圧倒的な戦績で、2位トヨタ・3位Subaruを退けました。前年(1997年)は個人タイトルを獲りながらチームでは3位に沈んでいたことを思えば、雪辱を果たす形での初戴冠です。
- シーズン合計7勝・勝率50%(全13〜14戦中)
- 順位:1位 Mitsubishi/2位 Toyota/3位 Subaru
- 個人タイトル:トミ・マキネンが史上初のドライバーズ3連覇(58ポイント)
- 前年との対比:1997年は個人優勝もチームは3位 → 1998年に雪辱の初戴冠
- 決定打:最終戦RACラリーでトヨタ・サインツ車がゴール手前約300mで脱落
この「三菱にとって史上唯一・悲願のマニュファクチャラーズタイトル初獲得」という事実そのものは、ランエボファンの間ではよく知られたエピソードです。しかし、その裏にあった「開幕3戦はEvo IV」「最終戦の劇的な脱落劇」「7勝・勝率50%という具体的な戦績」といった“中身”まで踏み込んで語られる機会は、意外と多くありません。Evo Vは、この歴史的な瞬間を実戦で支えた主役の一台だったのです。
出典・参考:トミ・マキネン(Wikipedia)(1997・1998年シーズン戦績詳細)/1998年WRC(Wikipedia)(マニュファクチャラーズ選手権結果・最終戦RACラリー結果)。※スウェーデン戦の車両表記(Evo IV/V)については情報源により差異があり、確定情報として扱っていません。
ちなみに『頭文字D』との関わりにも少し触れておきましょう。Evo V(CP9A)に乗るキャラクターとして、「会川(あいかわ)」という土坂峠のランエボチーム所属キャラクターが存在します。ただし注意点が2つあります。ひとつは、「会川」という名前自体が原作漫画・アニメ本編では明かされておらず、公式サイトやDVD解説・キャラクターブックといった二次資料にのみ記載された設定名だということ。もうひとつは、グレード表記がメディアによって異なり(アニメ版はGSR、ゲーム版はRSという情報がある)、断定が難しいという点です。「Evo Vに乗るキャラが頭文字Dに存在する」という事実自体は間違いありませんが、細部については上記の留保付きで捉えてください。
Evo Vを見て楽しむ|グッズ・専門誌・博物館事情
🏛 博物館事情|三菱オートギャラリーでもEvo Vは非展示
実車をじっくり見たいと思っても、Evo V単体の展示情報は多くありません。三菱オートギャラリー(愛知県岡崎市)の展示車両リストを確認すると、「ランサー1600GSRラリー」「ランサー2000ターボラリー」「ランエボⅥ」「パジェロ」などが並んでいますが、Evo Vは展示対象に含まれていません。三菱の公式ギャラリーでVIは展示されているのに、Vは非展示という状況は、Evo Vというモデルの立ち位置を考えるうえで興味深い事実です。
同様に富士モータースポーツミュージアムでも、Evo IIIやスタリオンの借用展示歴はあるものの、Evo Vの展示記録は確認できませんでした。
出典・参考:三菱オートギャラリー展示車両リスト(Wikipedia掲載情報)/富士モータースポーツミュージアム展示履歴情報。※展示車両は入れ替えが行われることがあります。来館前に各公式でご確認ください。
🎁 手元に置いて楽しむ|モデルカー
実車の展示機会が少ない一方、モデルカーの世界ではEvo Vがしっかり評価されています。まず注目したいのがタミヤ 1/24 スポーツカーシリーズNo.203「三菱ランサーエボリューションV WRC」(型番24203・1998年11月発売・全長183mm)。1998年チャンピオンマシンのカタルーニャ仕様デビュー戦を再現したキットで、ワイドボディ・ブリスターフェンダー・オーバーフェンダーが精密に再現され、シャーシ下面まで作り込まれています。この記事で紹介した1998年マニュファクチャラーズ初制覇の主役マシンを、手元で再現できる一台です。
もう一つの注目株がフジミ模型 1/24 インチアップシリーズNo.100「三菱 ランサーエボリューションV GSR」(品番ID-100・JAN4968728039190)。公式には「ご要望の多いランエボⅤの復活です」という文言があり、これは復刻商品であることが確認できています。窓枠マスキングシールやステアリング可動フロントタイヤなど、モデラー向けの工夫が凝らされたキットです。
ミニカーでは、タカラトミー トミカプレミアム「三菱 ランサー GSR エボリューションV」(10周年記念特別復刻商品)の実在も確認できていますが、価格・発売時期の詳細情報までは確認が取れていません。気になる方は、購入前に販売店や公式で最新情報を確認することをおすすめします。
📖 読み物で楽しむ|専門誌のEvo V単独特集
Evo Vを深掘りするなら「RALLY CARS Vol.24『MITSUBISHI LANCER EVOLUTION IV-VI』」(三栄・2019年6月14日発売)がおすすめです。この巻には「RALLY CARS GALLERY:時代に抗うもの 三菱ランサーエボリューションⅤ」という単体ギャラリーページに加えて、「小説より、奇なり トミ・マキネン3度目の戴冠と三菱ランサーエボリューションⅤ」というEvo V専用の読み物記事が収録されています。この記事で紹介した1998年ドライバーズ3連覇の裏側を、より詳しく味わえる一冊です。
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「他にもこの作品にEvo Vが出てるよ」「あのイベントで見たよ」という情報があれば、ぜひお問い合わせフォームから教えてください。みなさんからの情報で、このページをもっと充実させていきます🚗💨
Evo Vのよくある質問
Q. ランサーエボリューションV GSRとは、どんな車ですか?
A. 三菱自動車が1998年1月に発売した、ランエボ史上初となる3ナンバーワイドボディの4WDセダンです。4G63型2.0L直4DOHCターボで280PS、フルタイム4WD。WRCの規定変更に対抗するために全幅1,770mmへと拡大されました。
Q. なぜEvo Vはワイドボディ化したのですか?
A. 1997年にFIAが新設した「WRカー規定」により、ライバル勢はターボ・駆動方式を自由化した専用競技車で武装しました。三菱はあえて厳格な「グループA規定」での参戦を継続したため、ベース車の実力そのものを引き上げる必要に迫られ、全幅拡大・トレッド拡大という選択に至りました。
Q. Evo IVからEvo Vへの変更点は何ですか?
A. 主な変更は、全幅1,690mm→1,770mmへのワイド化、新形状の大型リアスポイラー、ブレンボ製対向ピストンブレーキの標準装備、最大トルク36.0kgf・m→38.0kgf・mの向上(最高出力280PSは据え置き)などです。ツインスクロールターボ自体はEvo I〜III時点で既存の機構で、Evo Vではノズル面積拡大という改良が加えられています。
Q. Evo Vの中古相場はいくらですか?
A. 2026年7月時点で、goo-net掲載13台が248万〜611万円(平均259.8万円)、carsensor.net掲載9台が189.0万〜479.9万円という状況です。ランエボVIのT.M.Editionが1,000万円超級まで高騰しているのに比べると、Evo Vはまだ手が届きやすい価格帯といえます。個体差・状態・時期により変動するため、最新は各中古車ポータルでご確認ください。
Q. グランツーリスモ7でEvo Vに乗れますか?
A. 乗れます。「Lancer Evolution Ⅴ GSR (CP9A) '98」が収録されており、Used Cars(中古車)で入手可能です。PPは483.25(kudosprime公式値。523.14という別説もあり)、306HP、ゲーム内価格は約67,100Crです(アップデートで変動します)。
Q. 1998年のWRCマニュファクチャラーズタイトルとは、どんな内容だったのですか?
A. 三菱チームがシーズン合計7勝・勝率50%を挙げ、2位トヨタ・3位Subaruを退けて獲得した、三菱史上唯一のマニュファクチャラーズ(製造者)タイトルです。決着は最終戦RACラリーで、トヨタのサインツ車がゴール手前約300mでメカニカルトラブルにより脱落するという劇的な展開でした。同時にトミ・マキネンは史上初のドライバーズ3連覇も達成しています。
Q. 「Tommi Makinen Edition」はEvo Vの特別仕様ですか?
A. いいえ、それは誤りです。「Tommi Makinen Edition(T.M.Edition)」は、Evo Vの翌モデルであるEvo VIの特別仕様(1999年末発売・マキネン4連覇記念・限定生産)です。Evo Vには、この名を冠した特別仕様は存在しません。時系列を混同しないようご注意ください。
Evo Vは「WRカー時代に真っ向勝負した」正常進化の傑作
ランサーエボリューションV GSR(CP9A)は、WRカー規定という新時代のルールにあえて背を向け、グループA規定での真っ向勝負を選んだ三菱の意地が生んだ、ランエボ史上初のワイドボディ車です。全幅1,770mm・トレッド拡大・ブレンボ製ブレーキ・トルクアップされた4G63エンジン。ひとつひとつの改良が、WRカー勢に対抗するための必然として積み重ねられています。
そしてその走りは、1998年のマニュファクチャラーズ初制覇(7勝・勝率50%)という、三菱史上唯一の栄光の中心で証明されました。最終戦RACラリーでのライバル脱落という劇的な結末とともに、トミ・マキネンの史上初ドライバーズ3連覇も同時に達成した、歴史の転換点に立つ一台です。
実車は190万円台〜600万円台に高騰し維持にも手がかかりますが、グランツーリスモ7ならPP483.25で、Evo IV・VIとの"進化の系譜"を体感しながら走らせられます。見て楽しむなら、タミヤ・フジミ模型の秀逸なプラモデルや、専門誌「RALLY CARS Vol.24」のEvo V単独記事もおすすめです。
ゲームで惚れて、いつか本物に。その入り口として、Evo Vはこれ以上ない一台です。もし「実車を」と思ったら、まずはいま乗っている愛車の価値を調べることから始めてみてください。
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