
三菱 ランサーエボリューションIX MR GSR(CT9A)とは、2006年8月に登場した、名機4G63型エンジンを積む最後のランサーエボリューションです。エボIXで初めて4G63にMIVEC(可変バルブタイミング機構)が組み合わされ、その最終仕上げとして送り出されたのがMRでした。翌2007年にエボXが登場し、17年続いた4G63のエボはここで幕を閉じます。
この記事では、IX MRの魅力・スペック・中古相場から、GT7での乗り方、そして「なぜこの1台だけ新車価格を超えて取引されるのか」という現在地まで、まるごと解説します。
4G63最後のエボ|MIVECという最後の答え
ランサーエボリューションの心臓は、初代から一貫して4G63という2.0L 直列4気筒ターボでした。
1992年のエボIから数えて14年。エボIXは、この4G63に可変バルブタイミング機構「MIVEC」を組み合わせた最初のエボです。
そして2006年8月に登場したIX MRが、4G63を積む最後のエボになりました。
ターボエンジンは、大きなタービンを与えれば最高出力は上がりますが、低回転では過給が立ち上がらず扱いにくくなります。
MIVECは、その扱いにくさを吸気側から解いた答えでした。
高回転域の性能を確保しながら燃費も改善するという、それまでの4G63にはなかった両立が実現しています。
4G63型エンジンに連続可変バルブタイミング機構MIVECを採用し、高回転域で高い性能を確保しながら燃費を向上させた
出典:Webモーターマガジン「ランエボの進化を辿る(その9)」
スペック|数字で見るIX MR GSR
| 項目 | 三菱 ランサーエボリューションIX MR GSR |
|---|---|
| 型式 | CT9A |
| 発売 | 2006年8月 |
| エンジン | 4G63型 1,997cc 直列4気筒DOHC 16バルブ インタークーラーターボ(MIVEC) |
| 最高出力 | 280PS |
| 最大トルク | 40.8kgm |
| 駆動方式 | フルタイム4WD |
| トランスミッション | 6速MT |
| 車両重量 | 1,420kg |
| ダンパー | ビルシュタイン製 |
| 乗車定員 | 5名(4ドアセダン) |
| 当時の新車価格 | 約362万円 |
※スペックは当時のカタログ値です。個体や仕様により異なります。
280PSという数字は、当時の国産車が守っていた自主規制の上限です。
つまり公称値では頭打ちになっていて、数字ではIX MRの本当の実力は見えません。
重要なのは40.8kgmという太いトルクと、1,420kgという車重の釣り合いのほうです。
MRとは何か|Mitsubishi Racingの3文字
MRは「Mitsubishi Racing」の頭文字です。
ランエボの各世代の終盤に、走行性能を煮詰めた上位版として与えられてきた称号でした。
IX MRではビルシュタイン製ダンパーをはじめとする足まわりの強化が施され、標準のIXとは別の性格を持っています。
GSRとRS|同じ車の2つの顔
ランエボには昔からGSRとRSという2つのグレードがありました。
| グレード | 性格 | 向いている人 |
|---|---|---|
| GSR | 装備を備えた完成品。そのまま速く、そのまま快適 | 公道で日常的に乗る人 |
| RS | 競技のベース車。装備を削り、手を入れる前提 | ラリー・競技で使う人 |
GSRは「買った状態で完成している」グレードです。
RSは軽さと素性を優先して装備を落とした、いわば白いキャンバスでした。
中古で探すとき、この2文字の違いは価格にも状態にも大きく響きます。
4輪を電子で束ねる|ACDとAYC
ランエボが「速い4WD」であり続けた理由は、エンジンだけではありません。
ACD(アクティブセンターデフ)が前後の駆動配分を、AYC(アクティブヨーコントロール)が左右後輪の駆動力を、それぞれ電子制御で振り分けます。
アクセルを踏むほど曲がっていく感覚は、この2つが生み出したものです。
ライバルのインプレッサWRX STIが「粘って曲がる」性格だったのに対し、ランエボは「曲げにいく」性格でした。
同じ2.0Lターボ4WDでも、この差は運転席で明確に伝わります。
新車価格を超えた|IX MRの現在地
ランエボ第3世代(VII・VIII・IX)の中古車は、近年になって価格が大きく動きました。
なかでもIX MRは別格です。
| モデル | 掲載台数 | 支払総額 |
|---|---|---|
| ランサーエボリューションVII | 47台 | 98万〜350万円 |
| ランサーエボリューションVIII | 47台 | 233.9万〜469万円 |
| ランサーエボリューションIX | 39台 | 287万〜960.2万円 |
※出典の調査時点のデータです。中古相場は時期・走行距離・状態・修復歴で大きく変動します。最新は各中古車サイトでご確認ください。
この表で目を引くのは、IXの上限960.2万円です。
当時の新車価格が約362万円ですから、およそ2.6倍。
そしてこの価格帯にいるのが、走行2万km台のIX MRでした。
一番人気は究極の4G63を積む「エボ9 MR」ですが、価格は完全にバブル状態
出典:カーセンサー「ランエボ第3世代の現在地」
MRグレードに絞ると、出典の調査時点で最も安い個体でも支払総額485.8万円でした。
掲載台数もIXは39台と、3世代のなかで最も少ない状態です。
「探せば見つかる車」ではなくなってきている、というのが実情に近いと言えます。
もう1つ、価格表に出てこない負担があります。20年前の4WDターボを維持する費用です。
この点はあとの「コスパ比較」の章で、実際の金額を並べて確かめます。
グランツーリスモ7のIX MR GSR
グランツーリスモ7にはランサーエボリューションIX MR GSR '06が収録されています。
実車では960万円に届く個体も、GT7の中では誰でも手に入れて走らせることができます。
GT7でのIX MRの性格
GT7のIX MRはとにかく素直で、練習台として優秀な1台です。
4WDらしく発進で駆動が逃げず、コーナーでも4輪が仕事をするため、姿勢が急に破綻しません。
FRの名車で滑って苦労した方が乗り換えると、走りやすさに驚くはずです。
走らせ方のコツ
- ブレーキは早めに終わらせる。4WDは向きが変わってからの加速が武器なので、コーナーの中まで減速を引きずると持ち味が消えます
- 立ち上がりでためらわない。前輪も駆動しているぶん、FRより早くアクセルを開けられます
- 雨や低ミューの路面で選ぶ。安定方向の性格が最もはっきり効いてきます
- タイヤ選びを軽視しない。トルクが太いので、レースの性格に合っていないタイヤだと4WDでも空転します
駆動方式そのものの違いや、ターボ車の扱い方は、それぞれ別の記事にまとめています。
🎮 まとめGT7の4WD車まとめ悪天候でも安定、初心者にも走りやすい駆動方式。収録車を一覧で。 🎮 まとめGT7のターボ車まとめ過給機がもたらすパワーとサウンドの魅力。4G63もこの系譜。ハンコンで乗るともっと気持ちいい
IX MRの持ち味は「アクセルを開けたぶんだけ前に出る」感覚にあります。
この感覚は、標準のコントローラーよりもハンドル型のコントローラー(ハンコン)のほうが伝わります。
踏み込みの深さを足で調整できるようになると、4WDの旨みが一段はっきりします。
Logicool G29はPS5/PS4対応の定番モデルです。
路面の反発がハンドル越しに返ってくるため、4輪がどれだけ仕事をしているかが手のひらで分かります。
6速シフターを足せば、IX MRの6速MTを自分の手で操作する感覚まで再現できます。
何をどの順番で揃えるかは、下の記事に予算別でまとめています。
🎮 あわせて読みたいGT7おすすめハンコン比較G29から本格ダイレクトドライブまで、予算別に選び方を解説。 🎮 初心者ガイドグランツーリスモ7 初心者ガイド必要な機材と予算別の始め方。まずはPS5とソフトだけで十分です。実車を維持する vs ゲームで乗る
① 実車のIX MRを所有・維持する費用
IX MRは2006年の車です。
初度登録から13年を超えた車は自動車税が重くなり、4WDターボは駆動系・過給系の部品代も現行車より高くつきます。
年間の目安はこのくらいです。
| 項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 自動車税(2.0L・13年超の重課) | 約51,700円 |
| 任意保険 | 約8〜15万円 |
| 車検(2年分を1年換算) | 約6〜9万円 |
| 整備・部品(4WDターボは特に希少) | 約15〜35万円 |
| 駐車場(地域差大) | 約0〜36万円 |
| 燃料(年5,000km・ハイオク) | 約10〜14万円 |
| 年間合計(目安) | 約45〜85万円 |
※地域・使用状況・個体の状態で大きく変わります。あくまで一例としてご覧ください。
ここに車両価格が乗ります。
MRの最も安い個体でも支払総額485.8万円、状態のよい個体は960万円台。
初期に500万〜1,000万円、そのうえ毎年45〜85万円というのが、いまIX MRを所有するということです。
② GT7で"実車感覚"を味わう機材コスト
| 機材 | 費用の目安 |
|---|---|
| PS5本体 | 約6〜8万円 |
| グランツーリスモ7(ソフト) | 約6,000〜9,000円 |
| ハンコン(Logicool G29等) | 約3〜6万円 |
| シフター(6速MT感覚を再現) | 約1〜2万円 |
| コックピット(固定・姿勢) | 約2〜5万円 |
| 維持費 | ほぼ0円 |
| 一式(目安) | 初期 約10〜25万円+以降ほぼ0 |
③ コスパ比較の結論
- 実車:初期 485万〜960万円 + 毎年 45〜85万円
- ゲーム:初期 10〜25万円 + 以降ほぼ0
ゲーム機材一式は実車の購入価格の数%程度でそろい、しかも事故・盗難・部品枯渇の心配がありません。ハンコンを足せば、4WDターボならではの分厚いトルクや、アクセルを開けたときに前へ引っぱられる感覚まで、かなり近いところまで味わえます。
「いつか本物のIX MRを」と思っている方も、それまでの間はGT7で乗り続けられます。
まずはハンコンから始めるのが、いちばん費用を抑えて実車感覚に近づく方法です。
「GT7で惚れて、いつか本物のIX MRに」。その前に、いま乗っている愛車の"本当の価値"を知っておきませんか。旧車相場が高騰している今は、手放す側にとっても追い風です。
※査定額・中古相場は車種・年式・走行距離・時期によって変動します。実際の金額は査定でご確認ください。
なぜIX MRは特別なのか
ランサーエボリューションは1992年、ラリーで勝つための車として世に出ました。
ベースは大衆セダンのランサー。そこに2.0Lターボと4WDを詰め込み、規定に合わせて市販する。公道を走る競技車という成り立ちです。
その心臓は、初代から一貫して4G63でした。
I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、そしてIX。9世代・17年にわたって、同じ型式のエンジンが磨かれ続けたことになります。
そして2006年8月のIX MRが、その最後の姿でした。
翌2007年に登場したエボXは、エンジンを新設計の4B11型へ切り替えます。
IX MRは「エボIXの上位版」であると同時に、「4G63というエンジンそのものの完成形」でもある。相場が他のエボと違う動きをしている理由は、ここにあります。
本物のランエボを見に行く
いま買うには手が届きにくくなったIX MRですが、実車を見るだけなら方法があります。
愛知県岡崎市にある三菱オートギャラリーでは、三菱の歴代車両が保存・展示されています。
ランエボの実車を、写真ではなく立体として見られる場所です。
近くにはトヨタ博物館や産業技術記念館もあり、1日でまとめて回れます。
※開館日・展示内容・見学方法は変わることがあります。お出かけ前に公式サイトでご確認ください。
📣 あなたの「IX MR目撃情報」募集中
街でIX MRを見かけた、あるいは今も所有されているという方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。
ご連絡はお問い合わせフォームからお願いします。
手元に置いて楽しむ|IX MRのモデルカー
実車が手の届かない場所へ行ってしまっても、形として手元に置く方法は残っています。
IX MRは1/64スケールでモデル化されており、しかもボンネットを開けると4G63が現れる「エンジン付」仕様まで用意されています。
この記事の主役であるMR GSRを、グレード名まで正確に再現したモデルです。
4G63そのものが主役の1台ですから、エンジンが見える仕様は理にかなっています。
ボディカラーは数種類が展開されているため、好みの色で選べます。
※価格・在庫は変動します。最新は商品ページでご確認ください。
VIIIとIX、IXとIX MRは何が違うのか
中古で探すとき、いちばん迷うのがこの3つの区別です。順に整理します。
VIII と IX の違い|MIVECの有無
最大の違いはMIVECの有無です。
同じ4G63でも、IXではバルブタイミングを可変にする機構が加わりました。
低回転の扱いやすさと高回転の伸び、そして燃費。この3つを同時に良くしたのがIXの世代です。
IX と IX MR の違い|足まわりの煮詰め
エンジンの型式は同じです。違うのは走らせるための仕立てで、MRにはビルシュタイン製ダンパーなどが与えられました。
数字のスペック表では差が見えにくい部分ですが、狙いは明確に分かれています。
| エボVIII | エボIX | エボIX MR | |
|---|---|---|---|
| エンジン | 4G63 | 4G63(MIVEC) | 4G63(MIVEC) |
| 位置づけ | MIVEC前の世代 | MIVEC採用の世代 | 4G63エボの最終形 |
| 足まわり | 標準 | 標準 | ビルシュタイン等で強化 |
| 中古の支払総額 | 233.9万〜469万円 | 287万〜960.2万円(IX全体・MR最安は485.8万円) | |
※中古価格は出典の調査時点。時期・走行距離・状態で変動します。
ランエボIX MR GSRのよくある質問
Q. ランエボIX MRは何が「最後」なのですか?
A. 初代から使われてきた4G63型エンジンを積む最後のランサーエボリューションです。翌2007年のエボXから新設計の4B11型に切り替わりました。
Q. 「MR」はどういう意味ですか?
A. Mitsubishi Racingの頭文字です。各世代の終盤に、走行性能を煮詰めた上位版として設定されてきました。IX MRではビルシュタイン製ダンパーなどが与えられています。
Q. エボIXで初めて採用されたMIVECとは何ですか?
A. バルブの開閉タイミングを回転数に応じて変える機構です。4G63に組み合わせたことで、高回転域の性能を確保しながら燃費も向上させました。
Q. GSRとRSはどう違いますか?
A. GSRは装備を備えた完成品、RSは装備を削った競技のベース車です。公道で日常的に乗るならGSR、手を入れて競技に使うならRSという住み分けでした。
Q. 中古でいくらぐらいしますか?
A. 出典の調査時点で、エボIXの支払総額は287万〜960.2万円でした。MRグレードは最も安い個体でも485.8万円です。時期・走行距離・状態で大きく変動するため、最新は中古車サイトでご確認ください。
Q. GT7に収録されていますか?
A. されています。実車では手が届きにくくなった1台も、GT7の中では手に入れて走らせることができます。
Q. GT7では初心者でも扱えますか?
A. 扱いやすい部類です。4WDのため発進で駆動が逃げにくく、コーナーでも姿勢が急に破綻しません。雨のレースではとくに差が出ます。
IX MRは「4G63の完成形」だった
- 4G63を積む最後のランエボ。2006年8月登場、翌年のエボXから新エンジンへ
- MIVECを得た4G63が、9世代17年の到達点として仕上げられた
- MR=Mitsubishi Racing。ビルシュタイン製ダンパーなどで走りを煮詰めた上位版
- 中古は支払総額287万〜960.2万円(IX全体・調査時点)。MRは最安でも485.8万円で、新車価格の約362万円を大きく超えている
- 維持費は年45〜85万円が目安。20年前の4WDターボは税も部品も割高
- GT7なら一式10〜25万円で、同じ車を今日から走らせられる
実車の相場は、もう「がんばれば買える」場所から離れてしまいました。
それでも、4G63が最後に到達した姿がどんな走りだったのかは、GT7の中で確かめられます。
ハンドルを握ってアクセルを開けたとき、17年ぶんの積み重ねが何だったのかが、少しだけ伝わってくるはずです。

















