
シボレー シェベル SS 454は、1970年に「450馬力」を名乗った車です。
アメリカの量産車が公表した出力として、この年がひとつの頂点でした。
ところが、その450馬力は2年後に270馬力になります。
同じ454立方インチのまま、別の車になったわけでもないのに、です。
グランツーリスモ7には「シボレー シェベル SS 454 Sport Coupe '70」として収録されています。
この記事では、実車の背景とスペック、いまの取引価格、そしてGT7での走らせ方までまとめました。
シェベル SS 454|上限が外れた年に生まれた1台
シェベルは、シボレーが1964年に出した中型車です。
フルサイズのインパラより一回り小さく、それでいて大きなエンジンが積める。アメリカではこの大きさの車をインターミディエイトと呼びます。
ただし、この中型車には長いあいだ縛りがありました。
GMが社内で「中型車に400立方インチ(約6.6リッター)を超えるエンジンを積まない」と決めていたのです。
その上限が、1970年モデルで撤廃されました。
シボレーはすぐに454立方インチ、約7.4リッターのV8を用意します。これがSS 454です。
スペック|数字で見るSS 454(LS6)
| 正式名称 | シボレー シェベル SS 454 スポーツクーペ(1970年式) |
|---|---|
| オプションコード | RPO Z15(SS 454パッケージ)+LS6 |
| エンジン | 454立方インチ V8 OHV 自然吸気 |
| 排気量 | 約7,440cc(ボア4.25in×ストローク4.00in) |
| 最高出力 | 450hp/5,600rpm(グロス表示) |
| 最大トルク | 500lb-ft/3,600rpm |
| 圧縮比 | 11.25対1 |
| 動弁系 | ソリッドリフター+ホーリー製4バレルキャブレター |
| 車両重量 | 約3,759lb(約1,705kg) |
| 全長×全幅×全高 | 197.2in×75.4in×53.2in(約5,009×1,915×1,351mm) |
| ホイールベース | 112in(約2,845mm) |
| 駆動方式 | FR(フロントエンジン・後輪駆動) |
| LS6生産数 | 4,475基(1970年のみ) |
※出力はいずれも当時のグロス表示です。数値は資料によって幅があるため、複数の資料で確認できた範囲を記載しています。
LS5とLS6|同じ454でも中身が違う
1970年のSS 454には、2種類の454が用意されていました。
- LS5:360馬力/4,400回転、圧縮比10.25対1、油圧リフター。街で普通に使える設定
- LS6:450馬力/5,600回転、圧縮比11.25対1、ソリッドリフター、アルミ製インテークにホーリーの4バレル
トルクはどちらも500lb-ftで同じです。
違うのはそれをどの回転数で出すかで、LS6は最高出力の発生回転が1,200回転も上にあります。低い回転で押し出すLS5に対し、LS6は回して使うエンジンでした。
価格でも差がつきました。ベースのシェベルが2,809ドル、SS 454のパッケージ(Z15)が503.45ドル、LS6への変更がさらに263.30ドル。M22のマニュアルまで足すと合計で988.55ドルの追加になり、車両価格は5,000ドル近くまで上がります。
「450馬力」が2年で270馬力になった理由
LS6がシェベルに載ったのは、1970年の1年だけです。
- 1970年:LS6が450馬力(グロス)。圧縮比11.25対1
- 1971年:圧縮比を8.5対1へ引き下げ。シェベルのLS6は消え、LS5が365馬力(グロス)/285馬力(ネット)
- 1972年:表示がネット値へ全面移行し、LS5は270馬力
数字が半分近くまで落ちて見えますが、原因は3つに分けて考えると分かりやすくなります。
- 測り方が変わった。グロスは補機類を外したエンジン単体、ネットは車に載せた状態での測定です
- 燃料が変わった。有鉛の高オクタン燃料を前提にできなくなり、圧縮比を下げる必要がありました
- 保険と規制が変わった。大排気量車の保険料が上がり、排出ガス規制も本格化していきます
1/4マイルの数字が資料で割れる
LS6の加速タイムを調べると、雑誌によって数字が違います。
- 13.12秒/107.0mph:ホットロッド誌 1970年5月号
- 13.8秒:モータートレンド誌 1969年12月号
0.7秒の差はかなり大きく見えますが、当時のテストは条件がそろっていません。
タイヤの銘柄、最終減速比、キャブレターの調整、路面温度。どれも各誌の裁量で、比較できる形になっていないのです。
※当ブログでは1つの数字を代表値とせず、13秒台前半から後半という幅で扱っています。
シェベル SS 454は今いくら?
結論から書くと、LS6かどうかで桁が変わります。
- LS6の実車:数千万円規模。書類で素性が証明できる個体は海外オークションでもたびたび話題になります
- LS5のSS 454:それより下の水準。ただし程度と修復歴で大きく振れます
- SSでないシェベル:さらに下がります。外装だけSS風に仕立てた個体も流通しています
価格差の理由は台数です。
LS6は4,475基しか作られておらず、そのうち現存し、かつ当時のエンジンを載せたままの個体はごくわずかしかありません。
「LS6と名乗っているが中身は別」という個体が存在するのもこの車の特徴で、海外では製造記録やビルドシートの照合が売買の前提になっています。
※価格は取引時期・個体の履歴・保存状態によって大きく変わります。最新の実勢は各オークションハウスの公表記録をご確認ください。
グランツーリスモ7のシェベル SS 454
GT7には「シボレー シェベル SS 454 Sport Coupe '70」という名前で収録されています。
2024年4月25日のアップデートで追加された車種で、レジェンドカーディーラーに並んだときに購入できます。
| GT7での車名 | シボレー シェベル SS 454 Sport Coupe '70 |
|---|---|
| 追加日 | 2024年4月25日のアップデート |
| 入手先 | レジェンドカーディーラー |
| 駆動方式 | FR |
| 最高出力 | 456PS |
| PP(ノーマル) | 472.64 |
※GT7の456PSは、実車の450hp(グロス)を馬力からPSへ換算した数字にあたります。PPと入荷状況はアップデートで変わることがあります。
GT7でのシェベルの性格
乗ってまず感じるのは、力はあるのに前に進みきらないことです。
- トルクが低い回転から出る。アクセルを踏んだ瞬間から押し出されます
- そのトルクをタイヤが受け止めきれない。1970年の車なのでタイヤが細く、簡単に空転します
- 車重が1.7トン近い。曲がるときも止まるときも、重さがそのまま出ます
- 足がやわらかい。荷重の移動がゆっくりで、動き出してから収まるまでに間があります
走らせ方のコツ
コツ1|立ち上がりは車をまっすぐにしてから踏む
ハンドルが戻りきる前に踏むと、そのまま流れていきます。「まっすぐになってから」を徹底するだけでタイムが変わります。
コツ2|ブレーキは早めに、長く
重い車なので止まるまでに距離が要ります。奥まで突っ込まず、手前から長く効かせるほうが結果的に速く走れます。
コツ3|ギアは高めに保つ
低いギアで回転を上げるとトルクが増えて空転します。1段高いギアで粘らせたほうが前に進みます。
コツ4|高速サーキットより、うねる公道系コースが合う
細かい切り返しが続くコースでは重さが不利になります。長い直線と緩いコーナーで構成されたコースのほうが持ち味が出ます。
FRという駆動方式そのものの特徴と、V8というエンジン形式の系譜は、それぞれまとめ記事で解説しています。
⚙️ まとめGT7のFR車まとめ曲がる・流せる操作性で選ぶ定番駆動方式を一覧で。 ⚙️ まとめGT7のV8エンジン車まとめあの咆哮を楽しむV8の名機を系譜でたどる。 🇺🇸 まとめGT7のアメリカン・マッスルカーまとめ排気量こそ正義だった時代のアメ車を一覧で。ハンコンで乗るともっと気持ちいい
シェベルのようにトルクが先に出てタイヤが負ける車ほど、ハンドル型のコントローラー(ハンコン)が効きます。
リアが動き始める手前の「軽くなる感じ」が手に返ってくるので、踏み足すかどうかを判断できるようになるからです。
Logicool G29は入門機ながら、駆動輪が滑り出す瞬間の手応えの変化をしっかり返してくれます。
アクセルを足で踏む量そのものを調整できるようになるので、この車ではとくに差が出ます。
実車を持つ vs ゲームで乗る
① 実車のシェベル SS 454を持つ場合
- 車両価格:LS6なら数千万円規模。素性の証明があるかどうかで大きく変わる
- 輸送と登録:国内に在庫が少なく、多くは輸入からの手続きになる
- 燃料:7.4リッターの自然吸気V8。燃費は現代の感覚から大きく外れる
- 整備:部品の供給自体はあるが、当時の仕様のまま維持しようとすると相談先が限られる
② GT7で味わう場合
- PS5+GT7:ソフト1本で全収録車に乗れる
- ハンコン:入門機なら3万円前後から
- 維持費:電気代のみ
- 壊す心配:ゼロ。何度でもやり直せる
③ 結論
この車に関しては、「本物かどうか」を確かめる手間がそのまま費用になります。
書類の照合、エンジン番号の確認、専門家への依頼。買う前の段階でここまで必要な車は多くありません。
GT7ならその手間がまるごと不要です。
1970年の454が、規制前の設定のまま入っています。
「GT7をきっかけに、旧いクルマの面白さに目覚めた」。そんな方こそ、いま乗っている愛車の"本当の価値"を知っておきませんか。旧車相場が高騰している今は、手放す側にとっても追い風です。
シェベルとカマロ・コルベットの関係
同じ時期のシボレーには、性格の違う3台が並んでいました。
- コルベット:2人乗りのスポーツカー。軽さと運動性能で勝負する
- カマロ:小型で若者向けのポニーカー。レースのレギュレーションに合わせた設定もある
- シェベル:4人乗れる中型車。大きなエンジンを積むための器
シェベルが選んだのは排気量で押し切る道でした。
カマロZ28が302立方インチの高回転型で規則の中を戦っていたのに対し、シェベルは規則の外で7.4リッターを積んでいます。
同じ会社が、同じ年に、まったく違う答えを出していた。
この3台を乗り比べると、当時のアメリカ車の幅が見えてきます。
シェベル SS 454のよくある質問
Q. シェベル SS 454の450馬力は、いまの表示だと何馬力ですか?
A. 1970年の450馬力はグロス値です。補機類を外した状態のエンジン単体で測った数字なので、車に載せた状態で測るネット値に直すと、これより2〜3割低い数字になります。実際に1972年のLS5は270馬力(ネット)と表示されました。エンジンがそこまで弱くなったわけではなく、測り方が変わったことと、圧縮比を下げたことの両方が効いています。
Q. LS5とLS6は何が違うのですか?
A. 排気量はどちらも454立方インチで同じです。違いは中身で、LS5が圧縮比10.25対1・油圧リフター・360馬力、LS6が圧縮比11.25対1・ソリッドリフター・ホーリー製4バレル・450馬力でした。LS6は回して使う設計で、最高出力の発生回転数も4,400回転から5,600回転へ上がっています。
Q. LS6は何台作られたのですか?
A. エンジン工場の記録では1970年に4,475基が製造されました。この年のLS6はシェベル系だけに使われています。中間車のシェベル全体の生産台数から見ると1%に届かない割合で、現存する個体はさらに少ないと考えられています。
Q. なぜ1970年だけだったのですか?
A. 1970年にGMが中間車の排気量上限(400立方インチ)を撤廃したことで454が積めるようになりました。ところが翌1971年には排出ガス規制と低オクタン燃料への対応で圧縮比が8.5対1まで下げられ、シェベルのLS6は姿を消しています。上限が外れた年と、規制が本格化する年がちょうど重なった結果、1年だけの設定になりました。
Q. 1/4マイルのタイムが資料によって違うのはなぜですか?
A. 同じLS6でも、雑誌によって13.12秒(1970年5月・ホットロッド誌/107.0mph)から13.8秒(1969年12月・モータートレンド誌)まで幅があります。当時のテストは装着タイヤ、最終減速比、キャブレターの調整、路面と気温がまちまちで、条件をそろえた比較になっていません。1つの数字を正解として扱うより、幅として見るほうが実態に近くなります。
Q. GT7ではどこで手に入りますか?
A. レジェンドカーディーラーに並んだときに購入できます。2024年4月25日のアップデートで追加された車種です。入荷は入れ替わるため、収録内容や入手方法の最新はゲーム内でご確認ください。
シェベル SS 454は「条件がそろった1年」の記録
- 1970年に上限が外れた。GMが中型車の400立方インチ制限をやめたことで454が積めるようになった
- LS6は450馬力(グロス)。圧縮比11.25対1、ソリッドリフター、ホーリーの4バレル
- 作られたのは4,475基だけ。シェベルのLS6は1970年の1年限り
- 2年後には270馬力(ネット)。測り方・燃料・規制の3つが同時に変わった
- GT7では456PS・PP472.64のFR。レジェンドカーディーラーで入荷を待つ1台
数字の大きさより、その数字が成立していた期間の短さが、この車の面白いところです。
前後の年式を並べて見ると、アメリカ車が方向を変えた瞬間がはっきり分かります。
GT7なら、その1970年の設定のまま何周でも走らせられます。
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