
グランツーリスモ7に収録されているフォードは12台。
この12台を並べると、ひとつ気づくことがあります。アメリカで作られた車と、ヨーロッパで作られた車が、まるで別の会社の製品のように違うのです。
片方は7台すべてがV8。もう片方は4台すべてが2.0〜2.3Lの直列4気筒ターボ。
同じ青い楕円のマークを付けながら、速さの作り方がまったく違います。
※収録内容はアップデートで変わることがあります。最新は公式サイトでご確認ください。
フォード12台は4つの系譜で読める
| 系譜 | 台数 | 性格 |
|---|---|---|
| ①マスタング | 5台 | 1965年から2016年まで、51年ぶんが並んでいる |
| ②ヨーロッパのフォード | 4台 | 小さい排気量にターボ。アメリカ勢とは速さの作り方が違う |
| ③フォードGT | 2台 | ル・マンのために作られた2台。11年をまたいでいる |
| ④規格外の1台 | 1台 | 砂漠を跳ぶために作られたピックアップトラック |
アメリカのフォードが作ったのは、大きな排気量のV8を積んだ車。
ヨーロッパのフォードが作ったのは、2.0L前後の小さなエンジンにターボを付けた車です。
| エンジン形式 | 台数 | 該当する車 |
|---|---|---|
| V8 | 7台 | マスタング5台、初代フォードGT、ラプター |
| 直列4気筒ターボ | 4台 | シエラ、エスコート、フォーカス2台(すべてヨーロッパ製) |
| V6ツインターボ | 1台 | 2代目フォードGT |
駆動方式で分けると、後輪駆動が6台、4輪駆動が3台、ミッドシップが2台、前輪駆動が1台という内訳になります。
ブランドの中にこれだけ駆動方式が散らばっているのは、GT7のメーカーの中でも珍しい部類です。
マスタング|51年ぶんが5台で並んでいる
12台のうち5台がマスタングです。
1965年の1台目と2016年の5台目のあいだは51年あります。GT7の中で、ひとつの車名がこれだけの幅で揃っているのは多くありません。
1965年 G.T.350|外の会社が手を入れた
マスタングは1964年に売り出された、若い人向けの手ごろな車でした。速さを売りにした車ではありません。
そこに手を入れたのがキャロル・シェルビーという人物です。後部座席を外し、ボンネットをFRP製に替え、遮音材を抜き、足まわりをレース用に組み替えました。
できあがったのがG.T.350。1965年型は562台だけ作られています。
出力は約306bhp、重さは標準のマスタングより約102kg軽い約1,265kgでした。
1969年 Boss 429|レースの規則が生んだ1,359台
Boss 429は、マスタングとして売りたかった車ではありません。
NASCARというレースに429立方インチ(7.0L)のセミヘミV8を持ち込むために、市販車として一定数を売る必要がありました。その数を満たすために作られたのがこの車です。
生産台数は合計1,359台(1969年859台・1970年約500台)。
大きすぎるエンジンを収めるためにエンジンルームまわりを広げる必要があり、通常のラインではなく専門業者の専用ラインで組み立てられました。
公表出力は375bhpですが、これは当時の測り方(エンジン単体での計測)による数字です。
いまの表示方法とは条件が違うため、そのまま現代の車と比べることはできません。
1971年 マッハ1|いちばん大きくなった時代
1971年のマスタングは、それまででいちばん大きな車体になりました。
全長約4,813mm、全幅約1,882mm。前の年より横幅が約3インチ(約76mm)広がっています。
この年の総生産台数149,678台のうち、マッハ1が36,499台。
アメリカ車が大きさと排気量で競っていた時代の、ちょうど頂点にあたる1台です。この時代の空気はアメリカン・マッスルカーまとめのほうがまとめて追えます。
2015年 マスタングGT|世界の車になった
2015年のマスタングGTには、2つの大きな変化があります。
- 後輪が独立懸架になった。それまでのマスタングは左右の後輪が1本の軸でつながった方式で、荒れた路面で跳ねやすい構造でした
- 世界120カ国で売られた。うち25の市場が右ハンドル。それまで基本的に北米の車だったマスタングが、世界中で買える車になりました
エンジンは5.0L V8「Coyote」で435hp(約441PS)。
GT7で走らせると、古い3台とはっきり違うのがコーナーの途中で路面が荒れたときの落ち着きです。
2016年 GT350R|V8が8,250rpmまで回る
5台の中で、いちばん普通ではないのがGT350Rです。
積んでいるのは5.2L V8「Voodoo」。このクランクシャフトが「フラットプレーン」という、アメリカのV8ではほとんど使われない形式です。
2016年型のGT350Rは526台。
ホイールは量産車で世界初のカーボン製(19インチ)で、リアシートを外すなど軽量化も徹底されています。
ヨーロッパのフォード|4台とも直4ターボ
この4台は、すべて2.0〜2.3Lの直列4気筒ターボです。
アメリカ勢が排気量で作っていた速さを、ヨーロッパのフォードは過給機で作りました。
| 車名 | 排気量 | 出力 | 駆動 |
|---|---|---|---|
| シエラ RS500 | 2.0L | 224HP | 後輪駆動 |
| エスコート RS コスワース | 1,993cc | 227PS | 4WD |
| フォーカスST | 2.0L | 約250PS | 前輪駆動 |
| フォーカスRS | 2.3L | 350PS | 4WD |
シエラとエスコート|同じ中身を積み替えた2台
この2台は、5年しか離れていないのに見た目がまったく違います。
それでも中身はつながっています。
1987年のシエラ RS500は、グループAというレースに出るための車でした。参加には市販車を一定数売っている必要があり、そのために500台だけ作られています。大きなリアウィングも、レースで使いたい形をそのまま市販したものです。駆動は後輪だけでした。
1992年のエスコート RS コスワースは、ラリーで勝つための車です。
ところが当時のエスコートには4輪駆動の設計がありませんでした。そこでフォードはシエラの4WD機構をそのまま持ってきて、エスコートの外板をかぶせました。
エスコート RS コスワースの生産台数は約7,145台。
生産期間は1992年から1995年までとする資料が多いものの、1996年までとする資料もあります。日本には正規輸入されていません。
フォーカス2台|同じ車で前輪駆動と4WDを比べられる
フォーカスSTとフォーカスRSは、土台が同じ車です。
それでいて駆動方式が違うので、GT7では珍しい比べ方ができます。
- ST(前輪駆動・約250PS):前のタイヤが曲がる仕事と進む仕事を両方やる。踏むタイミングを待てるかが問われる
- RS(4WD・350PS):4輪で押すので、同じ場所でもっと早く踏める。その代わり車重が約1,524kgと重い
STは12台で唯一の前輪駆動です。前輪駆動の走らせ方そのものはFF車まとめ、4WDの利点は4WD車まとめに整理してあります。
フォーカスRSには「ドリフトモード」という設定が付いていました。
後輪により多く力を送って、意図的に車の向きを変えやすくする仕組みです。市販車でこれを名前付きの機能として載せたのは、この車が最初とされています。
フォードGT|ル・マンのために作られた2台
フォードにはGT40という車がありました。1960年代にル・マン24時間レースでフェラーリを打ち破った車です。
GT7に収録されている2台のフォードGTは、どちらもこのGT40を出発点にしています。
2006年の初代|形も中身もアメリカのまま
初代フォードGTは2004年から2006年にかけて合計4,038台作られました。
エンジンは5.4L V8にスーパーチャージャーを付けて550PS。変速機は6速MTのみで、オートマチックの設定はありません。
全長約4,644mm。GT40より約109mm長いだけで、見た目はほぼそのままです。
2017年の2代目|V8をやめた
2代目で大きく変わったのはエンジンです。V8をやめ、3.5L V6ツインターボにしました。出力は647HP(656PS)。
車体はカーボンファイバー製で、生産はカナダの会社が担当しています。
そして2016年6月のル・マン24時間レースで、レース仕様のフォードGTがGTEクラスで優勝しました。
1966年にGT40がフェラーリを破ってから、ちょうど50年という節目です。市販型が売り出されたのは、この勝利のあとでした。
この2台は12台で唯一のミッドシップです。運転席の後ろにエンジンがある形で、走らせた感じは他の10台とはっきり違います。詳しくはMR車まとめを参照してください。
規格外の1台|砂漠のために作られたトラック
12台の中で、この1台だけが完全に別の種類の車です。
ピックアップトラック。荷台のある働く車を、砂漠を高速で走るために作り直したものです。
特徴は速さではなくサスペンションの動く量にあります。
前が284.5mm、後ろが307.3mm。普通の乗用車の2倍以上動きます。ダンパーもオフロード競技用の製品です。
エンジンは6.2L V8で411馬力(417PS)。
サーキットでタイムを狙う車ではありませんが、路面の荒れたコースやダートで走らせると、他の11台とはまったく違う乗り物だと分かります。
12台をどの順番で走らせるか
12台は性格が散らばっているので、順番を決めて走らせると違いが分かりやすくなります。
| 目的 | おすすめの並べ方 |
|---|---|
| まず1台だけ乗る | フォーカスRS。4WDで350PS。12台でいちばん扱いやすい部類 |
| マスタングの変化を見る | 1965年 G.T.350 → 1971年 マッハ1 → 2015年 マスタングGT。足まわりの進歩が体で分かる |
| 駆動方式を比べる | フォーカスST(前輪駆動)→ フォーカスRS(4WD)。土台が同じなので違いが駆動方式だけに絞られる |
| 後輪駆動と4WDを比べる | シエラ RS500(後輪駆動)→ エスコート RS コスワース(4WD)。エンジンの系統が近い2台 |
| いちばん速い1台 | 2代目フォードGT。647HPのミッドシップ |
後輪駆動が6台と多いので、FR車まとめの走らせ方を先に読んでおくと入りやすくなります。
GT7全体でどんな車が収録されているかは車種一覧から引けます。
GT7のフォードのよくある質問
Q. GT7にフォードは何台収録されていますか?
A. 当ブログで解説している範囲では12台です。そのうち5台がマスタングです。アップデートで追加されることがあるため、最新は公式サイトでご確認ください。
Q. アメリカのフォードとヨーロッパのフォードは何が違うのですか?
A. 同じ会社ですが、開発の拠点が別です。フォードは1967年にヨーロッパ部門をひとつにまとめ、独自に車を開発できる体制にしました。GT7の12台でも違いがはっきり出ていて、アメリカ製の7台は大きな排気量のV8、ヨーロッパ製の4台は2.0〜2.3Lの直列4気筒ターボです。
Q. 初心者に向いているフォードはどれですか?
A. フォーカスRSです。4輪駆動で車体も小さく、12台の中ではいちばん素直に扱えます。次に扱いやすいのはフォーカスSTとエスコート RS コスワースです。古いマスタング3台は力が強いうえに後輪駆動なので、慣れてからのほうが安心です。
Q. エスコート RS コスワースはなぜ「中身はシエラ」と言われるのですか?
A. 市販されていたエスコートは前輪駆動の小型車で、4輪駆動の設計がありませんでした。そこでフォードはシエラRSコスワースの4WD機構を流用し、エスコートの外板をかぶせています。見た目はエスコートでも、走る部分はシエラ由来というのが理由です。
Q. Boss 429やシエラRS500はなぜ生産台数が少ないのですか?
A. どちらもレースに出るための条件を満たすために作られた車だからです。当時のレースには、市販車を一定数販売していることという参加条件がありました。その数だけ作って売る形になったため、Boss 429は合計1,359台、シエラRS500は500台にとどまっています。
Q. 2代目フォードGTはなぜV8をやめたのですか?
A. レースで勝つことを前提に設計されたためです。車体を細く低く作るには、V8より小さいV6のほうが収まりがよくなります。結果として3.5L V6ツインターボが選ばれ、2016年のル・マン24時間でGTEクラス優勝という形で成果が出ました。
12台に、2つのフォードが並んでいる
- 12台のうち5台がマスタング。1965年から2016年まで、51年ぶんが揃っている
- アメリカ製7台はすべてV8。ヨーロッパ製4台はすべて2.0〜2.3Lの直4ターボ
- レースの規則が作った車が多い。Boss 429は1,359台、シエラRS500は500台、G.T.350は562台
- エスコート RS コスワースの中身はシエラ。4WD機構をそのまま移した
- ミッドシップはフォードGTの2台だけ。前輪駆動はフォーカスSTの1台だけ
フォードは大量生産の会社という印象が強いはずです。
けれどGT7に並ぶ12台を順に見ていくと、出てくるのは別の顔です。レースに出るためだけに500台の車を作り、他の車種の中身をそのまま移植し、勝つためにV8をやめる。そういう選択を繰り返してきた会社でもありました。
気になる1台が見つかったら、その車の記事も読んでみてください。
どんな事情で生まれた車なのかを知ってから走ると、同じ1周がまるで違って感じられます。








