
アルファロメオ 155 2.5 V6 TIは、ドイツツーリングカー選手権(DTM)で王者になった、ただ一つの非ドイツ製の車です。
それでいて、土台になった市販車は前輪駆動の4ドアセダンでした。
レース用の155は4輪駆動で、2.5リッターのV6が11,500回転まで回ります。
市販車とは中身がまるで違う車を、アルファロメオは同じ「155」の名前で走らせました。
グランツーリスモ7には「155 2.5 V6 TI '93」として収録されています。
この記事では、実車の背景とスペック、資料によって勝ち星の数が違う理由、そしてGT7での走らせ方までまとめました。
155 V6 TI|FFのセダンが4WDのレーシングカーになるまで
母体になった155は、1992年に登場した4ドアセダンです。
フィアット系の土台を使った前輪駆動で、それまでの75が後輪駆動だっただけに、登場したときのファンの反応は割れました。
ところがレース用の155 V6 TIは、その市販車とほとんど別の乗り物です。
エンジンは2.5リッターのV6、駆動方式は4輪駆動、変速機は6速のシーケンシャル。共通しているのは、外から見える形と名前くらいでした。
スペック|数字で見る155 V6 TI
| 正式名称 | アルファロメオ 155 2.5 V6 TI |
|---|---|
| 参戦年 | 1993年〜1996年(DTM/ITC) |
| エンジン | 2.5L 60度 V6(1996年に90度の新設計へ) |
| 最高出力 | 約420PS/11,500rpm(1996年型は約490PS) |
| ボア×ストローク | 93.0×61.3mm |
| 変速機 | 6速シーケンシャル |
| 駆動方式 | 4WD(フルタイム・前後おおむね3対7) |
| 車両重量 | 約1,040〜1,100kg(資料・年式で異なる) |
| 全長×全幅×全高 | 4,576×1,750×1,410mm |
| ホイールベース | 2,540mm |
| サスペンション | 前後マクファーソンストラット(1996年にダブルウィッシュボーンへ) |
※出力と車両重量は、資料と年式によって幅があります。当ブログでは複数の資料で確認できた範囲を記載しています。
数字で目を引くのは11,500回転という回し方です。
ボアが93.0mmなのに対して、ストロークは61.3mm。直径のわりに上下の動く量が短く、この形が高い回転数を許しています。
なぜ4輪駆動が許されたのか
当時のレース用の車には、「その技術が市販車にもある」ことが前提として求められました。
155が4輪駆動を名乗れたのは、155 Q4というモデルがカタログにあったからです。
Q4は、ランチア デルタ HFインテグラーレのエンジンと4輪駆動の機構を積んだ155でした。
グループの中で部品を融通した結果、前輪駆動が基本の155に、4輪駆動の1台が並んでいたわけです。
1993年|ドイツ勢の前で、開幕から最後まで
1993年のDTMは、Class 1という新しい規定の1年目でした。
エンジンは6気筒・2.5リッターまで、という条件です。
アルファロメオは155 V6 TIでこの年に臨みます。
開幕のゾルダーでニコラ・ラリーニが予選1番手を取り、その週末の2つのレースをどちらも勝ちました。
シーズンは10大会・20レース。
アルファ勢はこのうち12勝を挙げ、ラリーニが261点でドライバーズタイトルを獲得します。
相手は地元のメルセデスとBMW、そしてオペルでした。
190E 2.5-16 エボリューションIIも、M3スポーツエボリューションも、この時代の同じ土俵にいた車です。
DTMでタイトルを取った非ドイツのメーカーは、いまもアルファロメオだけです。
勝ち星の数が、資料によって違う理由
この年の成績を調べると、数字がそろいません。
| よく見かける書き方 | その数字が意味していること |
|---|---|
| 20戦12勝 | 選手権のレースだけを数え、アルファ勢の合計で見た場合 |
| ラリーニ11勝 | ラリーニ個人の勝利数として数えた場合 |
| ラリーニ10勝 | 同じく個人の数え方。1戦の扱いが変わると1つ減る |
| 22戦13勝 | 選手権に含まれないドニントンの2レースまで足した場合 |
差が出るのは2点です。
ひとつは選手権に数えないイギリス・ドニントンでの大会を含めるかどうか。もうひとつは、個人の勝利数で見るかチーム全体で見るかです。
当ブログでは「選手権20戦でアルファが12勝、ラリーニがドライバーズタイトル」を軸に書いています。
他の数字を見かけても、どちらかが誤りとは限りません。
155は今いくら?
この車については、先に分けて考える必要があります。
V6 TIは市販されていないレーシングカーで、街で見かける155は普通のセダンだからです。
- V6 TIの実車:台数が限られ、履歴のある個体が海外のオークションに出るたびに話題になります
- レプリカ:市販の155をV6 TIの外観に仕立てた車が国内外にあります。素性はまったく別物です
- 市販の155:4気筒のモデルなら手が届く価格帯ですが、部品と整備できる工場の問題が先に来ます
※価格は個体の履歴・状態・時期によって大きく変わります。実勢は販売店やオークションの公表記録でご確認ください。
グランツーリスモ7の155 2.5 V6 TI
GT7には「155 2.5 V6 TI '93」という名前で収録されています。
レジェンドカーディーラーに並ぶ1台で、店頭に出る時期は入れ替わります。
| PP | 約663 |
|---|---|
| 最高出力 | 413馬力/11,500rpm |
| 車両重量 | 1,010kg |
| 駆動方式 | 4WD |
| 吸気 | 自然吸気 |
| 価格 | Cr.650,000前後 |
| 入手先 | レジェンドカーディーラー |
※PP・価格・入手先はアップデートで変わります。最新はゲーム内でご確認ください。
GT7での155の性格
- 4輪駆動で姿勢が乱れにくい。踏んだときに車が暴れにくく、はじめて乗る人でも扱えます
- 回転を上で使う車。下の回転域は力が細く、力ではなく回転で走らせます
- 車体が軽い。1,010kgしかないので、向きの変わり方が速いです
- ターボがない。アクセルを踏んだ量に対して、力の出方が素直です
走らせ方のコツ
コツ1|回転を落とさない
11,500回転まで回るエンジンです。ギアを1段低く保ち、上の回転域を使い続けるほうが速く走れます。
コツ2|立ち上がりは早めに踏む
4輪駆動は前も引っ張ります。曲がりきる前から踏み始めても、姿勢が崩れにくい車です。
コツ3|ブレーキで向きを作る
ブレーキを少し残したまま向きを変えると、素直に曲がります。完全に減速を終えてから曲げようとすると、前が逃げます。
コツ4|中高速のコースが合う
空力と4輪駆動が効くので、低速の切り返しより、中高速の連続コーナーで持ち味が出ます。
4WDという駆動方式そのものの特徴は、まとめ記事で解説しています。
⚙️ まとめGT7の4WD車まとめ姿勢が乱れにくい4WDの特徴と、GT7の収録車を一覧で。ハンコンで乗るともっと気持ちいい
155のように回転域を使い分ける車ほど、ハンドル型のコントローラー(ハンコン)が効きます。
シフトの上げ下げと、コーナーでの細かい舵の当て方が、手の動きのままゲームに入るからです。
Logicool G29は入門機ながら、路面の反発をしっかり返してくれます。
回転を落とさずに走り続けるこの車では、シフト操作を手元で行える意味が大きく出ます。
実車を持つ vs ゲームで乗る
① 実車の155を持つ場合
- 車両価格:4気筒の市販モデルなら中古車として流通しています
- 部品:生産終了から時間が経っており、内装や電装の部品を探す手間がかかります
- 整備:イタリア車を診られる工場が近くにあるかどうかで負担が変わります
- V6 TI本体:レーシングカーなので、そもそも一般に流通する車ではありません
② GT7で味わう場合
- PS5+GT7:ソフト1本で全収録車に乗れる
- ハンコン:入門機なら3万円前後から
- 維持費:電気代のみ
- 壊す心配:ゼロ。何度でもやり直せる
③ 結論
V6 TIについては、比較そのものが成り立ちません。
市販されていない車だからです。
だからこそGT7の価値がはっきり出ます。
1993年にドイツ勢を倒したレーシングカーを、いつでも、何周でも走らせられる。実車の世界ではまず起きないことです。
「GT7をきっかけに、旧いクルマの面白さに目覚めた」。そんな方こそ、いま乗っている愛車の"本当の価値"を知っておきませんか。旧車相場が高騰している今は、手放す側にとっても追い風です。
※査定額・中古相場は車種・年式・走行距離・時期によって変動します。実際の金額は査定でご確認ください。
155 V6 TIのよくある質問
Q. アルファロメオ 155 V6 TIは市販されていましたか?
A. 市販されていません。DTMのために作られたレーシングカーです。市販されていたのは155という4ドアセダンで、こちらは前輪駆動が基本、4輪駆動の155 Q4も設定されていました。
Q. 1993年のDTMで155は何勝したのですか?
A. 選手権20戦のうちアルファロメオ勢が12勝し、ニコラ・ラリーニがドライバーズタイトルを獲得しました。資料によって10勝・11勝・13勝と書かれることがありますが、これは選手権に数えないドニントンの大会を含めるかどうかと、個人の勝利数で見るかチーム全体で見るかの違いによるものです。
Q. なぜ4輪駆動なのですか?
A. 市販の155に4輪駆動のモデルがあったためです。155 Q4はランチア デルタ HFインテグラーレのエンジンと4輪駆動の機構を流用しており、その延長でレース用の155も4輪駆動を名乗れました。
Q. エンジンはどんな特徴がありますか?
A. 2.5リッターの60度V6で、ボア93.0mmに対してストロークが61.3mmという短いストロークの設計です。約420馬力を11,500回転で出します。1996年には90度の新型に切り替わり、490馬力前後まで上がりました。
Q. GT7ではどこで手に入りますか?
A. レジェンドカーディーラーに並びます。入手できる時期や価格はアップデートで変わるため、最新はゲーム内でご確認ください。
Q. 初心者でも乗れますか?
A. 乗れます。4輪駆動で姿勢が安定するため、同じ年代のレーシングカーの中では扱いやすい部類です。回転を落とさないことだけ意識してください。
155 V6 TIは「あり合わせ」が王座を取った1台
- 土台は前輪駆動のセダン。155という市販車から始まった車
- 4輪駆動はデルタ由来。155 Q4があったから名乗れた
- 2.5リッターV6で11,500回転。短いストロークが高回転を許した
- 1993年に20戦12勝。ラリーニがドライバーズタイトルを獲得
- 非ドイツで唯一の王者。この記録はいまも破られていない
借りてきた部品と、市販車の看板。
その組み合わせで本場のドイツ勢を倒したところに、この車の面白さがあります。
GT7では1,010kgの軽さと4輪駆動がそのまま再現されています。
同じ1993年を戦った190EやM3と乗り比べると、各社が何で勝とうとしていたのかが見えてきます。







