
フォード エスコート RS コスワースは、名前とかたちが一致していない車です。
顔は大衆車のエスコート。ところが骨格も駆動系も、別の車から持ってきたものでした。
理由はひとつ。WRCで勝つためです。
ラリーの規則に合わせて中身を選んだ結果、エスコートの皮をかぶった別の車ができあがりました。
グランツーリスモ7には「フォード エスコート RS Cosworth '92」として収録されています。
この記事では、実車の成り立ちとスペック、いまの相場、そしてGT7での走らせ方までまとめました。
※収録内容はアップデートで変わることがあります。最新は公式サイトでご確認ください。
エスコートの顔をした、中身の違う車
1990年代前半のWRCはグループAという規則で戦われていました。
ここには「市販車をある程度の台数売っていなければ出られない」という条件があります。
フォードには問題がありました。
当時のラリーで勝つには4輪駆動が要るのに、エスコートには4WDの設定がなかったのです。
スペック|数字で見るRSコスワース
| 正式名称 | フォード エスコート RS コスワース |
|---|---|
| 生産期間 | 1992年〜1995年(資料により1996年までとも) |
| エンジン | コスワース YBT型 直列4気筒 DOHC ターボ |
| 排気量 | 1,993cc |
| 最高出力 | 227PS |
| 最大トルク | 30.4kgm |
| 駆動方式 | 4WD(シエラRSコスワース由来) |
| 生産台数 | 約7,145台 |
| 日本での販売 | 正規輸入なし(並行輸入のみ) |
※生産期間は資料によって幅があります。1995年にEUの排出ガス規制で生産を終えたとする資料と、1996年までとする資料の両方が存在します。
コスワースYBT|レース屋が作ったエンジン
コスワースはイギリスのエンジン専門の会社です。
F1で数多くの勝利を挙げてきた組織が、市販車用に手を入れたのがYBT型でした。
2リッターの4気筒にターボを付けて227PS。
いまの目で見ると驚く数字ではありませんが、1992年の2リッターとしては相当なものです。しかもこれは市販状態での数字で、競技車はここからさらに引き上げられていました。
兄にあたるシエラRS500コスワースも同じ系統のエンジンを積んでいます。
🏁 兄にあたる車Ford Sierra RS500 Cosworth500台限定の怪物。同じコスワース系エンジンを積むシエラRS500。あの2段ウイングは、本当は3段になるはずだった
この車を見て誰もが目を奪われるのが、屋根から立ち上がる巨大な2段のリアウイングです。
デザインを担当したのはフランク・スティーブンソン。
彼が最初に構想していたのは3段でした。それが社内の調整を経て2段に落ち着いています。
WRCでの戦績|1993年から4年間で7勝
実戦に投入されたのは1993年から1996年。
この間に7勝を挙げています。
特筆されるのが1993年のサンレモ・ラリーです。
ここで勝ったのはフォードのワークスチームではなく、ジャンカルロ・クニコというプライベーターでした。市販車から仕立てた車で、メーカーの本気の体制を上回ったことになります。
のちにラリー界の頂点に立つトミ・マキネンも、この車で勝利を挙げています。
当時のWRCは各社が同じ考え方の車を持ち込んだ時代でした。2リッター級のターボに4輪駆動。日本勢もイタリア勢も、行き着いた答えは同じです。
🇮🇹 当時の王者ランチア デルタ HFインテグラーレ エボルツィオーネWRC史に残る王者。ランチア デルタ HFインテグラーレ。 🇯🇵 同時代の日本勢ランサーエボリューションIV GSR(CN9A)世界初のAYCを積んだランサーエボリューションIV。 🇯🇵 のちの覇者スバル インプレッサ WRX STI(GDB・涙目)WRC黄金期を支えたインプレッサ WRX STI(GDB)。エスコート RS コスワースは今いくら?
年々上がっている車です。
とくに状態のよい個体は、1990年代の実用車としては考えにくい価格で取引されています。
理由は3つあります。
- 生産が約7,145台と少ない。しかもラリーやサーキットで使われて失われた個体が多い
- 日本には正規輸入されていない。国内にある個体は並行輸入で入ってきたものに限られる
- 90年代のWRC車が世界的に評価されている。デルタやインプレッサと同じ流れの中にある
※価格は個体の状態・走行距離・仕様・時期によって大きく変わります。最新の実勢は販売店や専門店の掲載情報でご確認ください。
グランツーリスモ7のエスコート RS コスワース
GT7には「フォード エスコート RS Cosworth '92」として収録されています。
2リッターターボの4WDという組み立てなので、同時代のラリー車と同じ土俵で走らせられます。
GT7でのRSコスワースの性格
- 4輪駆動で安定している。滑り出しても唐突に向きが変わらず、立て直しやすい
- ターボの効き方に段差がある。低い回転では大人しく、ある回転から一気に来る
- 車体が軽い。もとが大衆車のエスコートなので、同じ出力の車より身軽に動く
- 後ろを押し付ける力が強い。あのウイングは飾りではなく、速度が乗るほど安定する
走らせ方のコツ
コツ1|回転を落とさない
ターボが効き始めるまでに間があります。ギアを1段低く保ち、効いている回転域から下げないようにすると速く走れます。
コツ2|曲がりながら少しずつ開ける
4WDは踏むことで前に引っ張られ、姿勢が安定します。後輪駆動のように「曲げきってから」ではなく、曲がりながら少しずつ開けるほうが速く走れます。
コツ3|縁石を怖がらない
もとがラリー車なので、路面の荒れに強い足を持っています。多少乗り上げても姿勢を崩しにくく、内側を積極的に使えます。
コツ4|雨の日に選ぶ
4輪で駆動する車は、濡れた路面で差が出ます。後輪駆動の車が苦しむ場面で、この車は普通に走れてしまいます。
駆動方式ごとの特徴は、まとめ記事でも解説しています。
🎮 まとめGT7の4WD車まとめ悪天候でも安定する4WDの収録車を一覧で。 ⚙️ まとめGT7のターボ車まとめ過給機がもたらすパワーとサウンドの魅力、ターボ車まとめ。ターボの段差はハンコンで分かる
この車の面白さはターボが効き始める瞬間にあります。
その段差を足で覚えられるかどうかで、コーナーの立ち上がりが変わります。
Logicool G29はアクセルペダルの踏み込み量を細かく調整できます。
ターボが来る手前で少し開けておく、という操作ができるようになると、この車の速さが引き出せます。
実車を持つ vs ゲームで乗る
① 実車のRSコスワースを持つ場合
- 車両価格:状態のよい個体は年々上がっている
- 探す手間:日本に正規輸入されていないため、玉数が少ない
- 部品:30年以上前の欧州車。専用部品は海外から取り寄せることになる
- 整備:コスワース系エンジンを扱える工場を見つける必要がある
② GT7で味わう場合
- PS5+GT7:ソフト1本で全収録車に乗れる
- ハンコン:入門機なら3万円前後から
- 維持費:電気代のみ
- 壊す心配:ゼロ。何度でもやり直せる
③ 結論
この車に関しては、まず現物を探すところから難しいのが実情です。
そもそも国内での流通が限られているうえ、状態のよい個体は相場が上がり続けています。
GT7なら、その1台にいつでも乗れます。
ラリーで戦った車を、雨のコースで全開にできる。実車ではまず試せない使い方ができます。
「GT7をきっかけに、90年代のラリー車に興味が出た」。そんな方こそ、いま乗っている愛車の"本当の価値"を知っておきませんか。旧車相場が高騰している今は、手放す側にとっても追い風です。
※査定額・中古相場は車種・年式・走行距離・時期によって変動します。実際の金額は査定でご確認ください。
シエラからエスコートへ|規則が形を変えた
フォードは1980年代から、コスワースと組んで競技用の市販車を出し続けてきました。
| 年 | 車名 | 戦う場所 |
|---|---|---|
| 1987年 | シエラ RS500 コスワース | ツーリングカーレース(後輪駆動) |
| 1990年 | シエラ RS コスワース 4×4 | ラリー(4輪駆動化) |
| 1992年 | エスコート RS コスワース | ラリー(小さく軽い車体へ) |
並べると流れが見えます。
舗装のサーキットからラリーへ、そして大きな車体から小さな車体へ。戦う場所が変わるたびに、フォードは形を変えてきました。
エスコート RS コスワースは、その流れの終点にあたります。
シエラで手に入れた4WDを、ラリーに向いた小さな車体に移し替えたのがこの車です。
エスコート RS コスワースのよくある質問
Q. なぜ「中身はシエラ」と言われるのですか?
A. 当時の5代目エスコートには4WDの設定がなく、ラリーで戦うには足りなかったからです。そこでフォードはシエラRSコスワースの4WD機構を流用し、エスコートの外観をかぶせました。見た目はエスコートでも、走りを支えている部分は別の車から来ています。
Q. コスワースとはどういう会社ですか?
A. イギリスのエンジン専門メーカーです。F1で数多くの勝利に関わってきたことで知られ、市販車のエンジンにも手を入れています。この車に積まれたYBT型は、そのコスワースが仕上げた2リッターターボです。
Q. あの大きなリアウイングは何のためですか?
A. 走行中に車体の後ろを地面へ押し付けるためです。ラリーでは高速の未舗装路も走るため、安定させる必要がありました。デザイナーのフランク・スティーブンソンは当初3段の構想を持っていましたが、最終的に2段になっています。
Q. 何台作られたのですか?
A. 約7,145台とされています。生産の終わりは、1995年にEUの排出ガス規制で終了したとする資料と、1996年までとする資料があり、幅があります。
Q. 日本で買えますか?
A. 正規輸入はされていないため、国内にある個体は並行輸入で入ってきたものです。玉数が少なく、状態のよい個体の相場は上がり続けています。
Q. GT7で初心者でも扱えますか?
A. 扱えます。4輪駆動なので挙動が穏やかで、滑り出しても立て直しやすい部類です。後輪駆動の車で苦戦している方が乗り換えると、走りやすさの違いがはっきり分かります。
規則から逆算して作られた1台
- エスコートの顔をした別の車。4WD機構はシエラRSコスワースから流用された
- コスワースYBT型。2リッターターボで227PS・30.4kgm
- 約7,145台。日本には正規輸入されず、並行輸入のみ
- 2段の巨大ウイング。デザイナーが構想した3段から1段減った形
- WRCで7勝。1993年サンレモではプライベーターが勝利を挙げた
この車を見ていると、1990年代のモータースポーツが何だったのかが分かります。
規則が先にあり、そこから逆算して市販車が作られた。同じ時代のドイツには190Eがあり、イタリアにはデルタがあり、日本にはランサーとインプレッサがありました。
GT7には、その全部が揃っています。
同じ規則の下で生まれた車を並べて走らせられるのは、なかなかできない体験です。








