
日産 スカイラインGT-R V·spec II(BNR32)とは、1994年2月14日から同年10月20日までのわずか約8ヶ月だけ生産された、第二世代GT-Rの最終進化型。RB26DETT直6ツインターボ・ATTESA E-TS四輪駆動・スーパーHICASを武器に、全日本ツーリングカー選手権(JTC)グループAクラス1990〜1993年の全29戦で全勝。豪Wheels誌に「Godzilla(ゴジラ)」と命名され、16年ぶりに復活した平成のGT-Rとして伝説になった一台です。生産台数はわずか1,306台。中古相場は2025〜2026年で400万〜1,000万円超と希少性が際立っています。
この記事では、BNR32 V·spec IIの魅力・スペック・中古相場から、GT7での乗り方、そしてJTC 29連勝・ニュル開発・『頭文字D』中里毅・湾岸ミッドナイト・豪ATCC連覇まで、まるごと解説します。
目次
- 1 16年ぶり復活|BNR32 V·spec II誕生とスペック
- 2 BNR32は今いくら?V·spec IIの希少相場と探し方
- 3 グランツーリスモ7のBNR32 V·spec II|PP515と乗りこなし
- 4 ハンコンで乗るともっと気持ちいい|機材ガイド
- 5 実車を維持する vs ゲームで乗る|コスパ比較
- 6 実車のBNR32に触れる|借りて乗る・集まる
- 7 BNR32を見て楽しむ|JTC・Godzilla・頭文字D・湾岸
- 8 JTCグループA 29連勝伝説|前人未踏の全勝記録
- 9 豪ATCC連覇とGroup A消滅|ゴジラ無双の象徴
- 10 BNR32の本物を見に行く|博物館・コレクション
- 11 BNR32 V·spec IIのよくある質問
- 12 BNR32 V·spec IIは「16年ぶり復活のゴジラ」最終進化型
- 13 GT-Rの系譜とS20源流もチェック|Z432・ハコスカ・BNR34・R35
16年ぶり復活|BNR32 V·spec II誕生とスペック
スカイラインGT-Rは、PGC10ハコスカ(1969年)→ KPGC110ケンメリ(1973年・幻のGT-R)のあと、排ガス規制で16年間も歴史が途絶えていました。それが平成元年、つまり1989年8月、3代目GT-R=BNR32として復活。「勝つために生まれた」をキャッチコピーに、開発主管・伊藤修令(いとう なおのり)がチームを率い、当時の日産が持てる技術を惜しみなく投入した一台でした。
BNR32は段階的に進化していきます。標準モデル(1989年8月〜)に続き、1993年2月にV-specが登場。日本車初のブレンボ製ブレーキ(フロント4POT/リア2POT)とBBS鍛造17インチホイールを標準装備し、タイヤは225/50R17を履きました。そして1994年2月14日、最終進化型「V·spec II」が登場。V·spec IIで実質的に変わったのはタイヤ1点のみ。17インチホイールはそのままに、タイヤを245/45R17(ブリヂストン POTENZA RE010)へとワイド化・低扁平化し、グリップを高めました。ブレンボやBBSはV-spec(1993年2月)からの装備であって、V·spec IIで新採用された装備ではありません。この点はクルマ好きの間でもよく誤解されるポイントです。
心臓部のRB26DETT型 2.6L 直列6気筒DOHC 24Vインタークーラー付きツインターボは、最高出力280PS/6,800rpm(自主規制上限)、最大トルク36.0kgf·m/4,400rpmを発生。鋳鉄ブロックに強度を持たせた設計で、のちにチューナーが1,000PS超まで引き上げる伝説のベースエンジンになっていきます(公称値は当時の自主規制によるカタログ値であり、ネット上に流れる実出力の具体値は出典が分かれるため断定を避けます)。
足回りは、後輪駆動ベースで必要時に最大50:50まで前輪へトルクを配分する電子制御四輪駆動「ATTESA E-TS」(後述)と、電子制御後輪操舵「スーパーHICAS」。「コーナーではFRのように曲がり、加速ではトラクションで蹴り出す」。その独特の走りが、第二世代GT-R伝説の原点になりました。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 型式 | BNR32(V·spec II) |
| 生産期間 | 1994年2月14日〜1994年10月20日(約8ヶ月) |
| エンジン | RB26DETT型 2.6L 直6 DOHC 24V ICツインターボ |
| 排気量 | 2,568cc |
| 最高出力 | 280PS/6,800rpm(自主規制上限・カタログ公称値) |
| 最大トルク | 36.0kgf·m/4,400rpm |
| 駆動方式 | ATTESA E-TS(電子制御トルクスプリット4WD) |
| 四輪操舵 | スーパーHICAS(電子制御後輪操舵) |
| トランスミッション | 5速MT |
| ブレーキ | ブレンボ製(フロント4POT/リア2POT・V-specから標準) |
| ホイール | BBS鍛造17インチ(V-specから標準) |
| タイヤ | 245/45R17(V·spec II・POTENZA RE010) |
| 車両重量 | 約1,480kg |
| 生産台数 | 1,306台(V·spec II・限定) |
出典・参考:日産・スカイラインGT-R(Wikipedia)(BNR32 V-spec/V·spec II・生産期間・装備差)/Nissan Skyline GT-R(英Wikipedia)(V·spec II=1,306台・V-spec=1,396台・BNR32全体43,937台)/日産・RBエンジン(Wikipedia)(RB26DETT諸元)。※最高出力は当時の280PS自主規制によるカタログ値。実出力に関する各種の数値は出典が分かれるため断定を避けています。
BNR32は今いくら?V·spec IIの希少相場と探し方
BNR32の中古相場は、ここ数年で大きく動いています。米国の「25年ルール(製造から25年経過した車両が並行輸入で合法登録できる制度)」がBNR32全年式(1989〜1994年)で解禁済みになり(2019〜2020年頃から順次)、Bring a Trailer等の北米オークションで高値取引が続いたことが、国内相場の押し上げ要因になりました。具体的な目安は、このくらいです(時期・状態で大きく変わります)。
- BNR32全体の流通価格帯:おおむね400万〜1,000万円(2025〜2026年・カーセンサー調べ)
- 買取相場の幅:140万〜1,500万円と状態差が極めて大きい(改造車王・買取参考値)
- V·spec II(1,306台限定)は希少性が高く、上限近くで取引される傾向
- 2025年1月の東京ベイオークションでは、1994年式BNR32が予想落札1,700万〜2,200万円で出品された例も(V·spec IIかどうかは個別確認)
- 米国側(Bring a Trailer等):直近でUSD 60,000〜150,000+の取引例(年式・状態・グレードで変動)
出典・参考:カーセンサー(スカイラインGT-R BNR32 中古車検索)/Nissan Skyline GT-R(英Wikipedia・25年ルール解禁・生産台数)/Bring a Trailer(R32 GT-R落札履歴)。※V·spec IIの個別落札実績は出品ごとに大きく異なるため、レンジでの表記にとどめています。
※相場は時期・状態・走行距離・グレードで大きく変わります。V·spec IIは個体数が極端に少ないため、最新の出品・落札は各中古車ポータル・オークションでご確認ください。
「GT7で惚れて、いつか本物のBNR32を」。その前に、いま乗っている愛車の“本当の価値”を知っておきませんか。旧車・90年代スポーツ相場が高騰している今は、手放す側にとっても追い風です。
※査定額・中古相場は車種・年式・走行距離・時期によって変動します。実際の金額は査定でご確認ください。
グランツーリスモ7のBNR32 V·spec II|PP515と乗りこなし
グランツーリスモ7には、BNR32 V·spec IIが「Nissan Skyline GT-R V·spec II (R32) '94」(車番号car773)として収録されています。
- 収録名:Nissan Skyline GT-R V·spec II (R32) '94
- PP値:PP515.54(中速重量級・第二世代GT-R内では最古参)
- 入手方法:中古車(ユーズドカー)でCr.173,400、またはカフェメニュー#18(GT-R史)達成で無料入手
- 必要条件:エクストラメニュー#13のクリア
- ゲーム内出力:306BHP/39.9kgf·m(GT7内表記・実車公称280PS/36.0kgf·mとは書き分け)
持ち味は、何といってもATTESA E-TS譲りの4WDトラクション。立ち上がりでアクセルを踏み切れる安心感は、同世代のFRスポーツとは別物です。一方で、車重があるためブレーキの早めの仕込みと、コーナー入口での丁寧な荷重移動が要求されます。ニュルブルクリンクや筑波などのテクニカルコースで「曲げてから踏む」リズムを掴めば、当時のJTCマシンの面影をたっぷり味わえる一台です。
出典・参考:グランツーリスモ7 公式(収録車種)/SAMURAI GAMERS(GT7攻略)/JEGT GRAND PRIX。※ゲーム内出力表記(BHP・kgf·m)と実車のカタログ公称値(PS・kgf·m)はゲーム内補正・年式モデルの違いで一致しません。書き分けてください。
※クレジット価格・PP値・入手条件・カフェメニュー番号はゲームのアップデートで変動します。最新はゲーム内でご確認ください。
ハンコンで乗るともっと気持ちいい|機材ガイド
GT7でBNR32 V·spec IIをさらに楽しむなら、ハンドルコントローラー(ハンコン)がおすすめです。重量級のフロントエンジン4WDを自分でハンドリングする感覚は、コントローラーとは別物。ATTESAが前輪に駆動を割り振る瞬間の手応えまで、グッと現実に近づきます。ここでは、GT7を“実車感覚”で楽しむための機材を「まず必須」と「あるとより楽しい」に分けて紹介します。
<まず必須>これがあれば、すぐにGT7で走り出せる
GT7を遊ぶ土台です。
PS5本体・GT7ソフト・ディスクドライブがあれば走り出せます。
さらにハンコンを足せば、“自分でハンドルを握る”運転体験に。
<あるとより実車に近づく>足すほど没入感が一段ずつ上がる
ここから先は“より実車に近づく”ための投資。
コックピットで姿勢が決まり、シフトで操作感が増し、VRで視界ごと没入できます。
※機材価格・在庫は時期・モデルによって変わります。最新の金額は各販売店でご確認ください。
📶 オンライン対戦も楽しむなら|回線も“快適”に
GT7の醍醐味のひとつが、世界中のプレイヤーと走れるオンライン対戦です。
でも回線が遅い・不安定だと、ラグで思うように勝負できません。
速くて安定した光回線にしておくと、オンラインがグッと快適になります。
中でも@スマート光は、低遅延の「v6プラス」が無料で使えて、月額も安め。
浮いたぶんをハンコンや機材に回せます。
※料金・条件は変わります。
最新は公式でご確認ください。
実車を維持する vs ゲームで乗る|コスパ比較
① 実車BNR32 V·spec IIを所有・維持する費用
BNR32 V·spec IIは1994年デビューの旧車。
維持費は現行車より高めになりがちです(13年超の自動車税重課、RB26固有の整備、希少パーツの単価高など)。
年間の目安はこのくらいです。
| 項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 自動車税(2.6L・13年超の重課) | 約65,200円 |
| 任意保険(高額車両・年式古め) | 約10〜18万円 |
| 車検(2年分を1年換算) | 約6〜10万円 |
| 整備・部品(RB26固有・希少化) | 約20〜50万円 |
| 駐車場(地域差大) | 約0〜36万円 |
| 燃料・消耗品(ハイオク・実燃費6〜8km/L目安) | 約15〜25万円 |
| 年間合計(目安) | 約55〜145万円 |
さらに、購入費が約400〜1,000万円(V·spec IIは上限近く)かかります。
② GT7で“実車感覚”を味わう機材コスト
一方、GT7でBNR32 V·spec IIを「実車感覚」で走らせる機材は買い切り(初期費用のみ)。
一度そろえれば、あとは電気代くらいです。
| 機材 | 価格の目安 |
|---|---|
| PS5本体 | 約6.6〜8万円 |
| グランツーリスモ7(ソフト) | 約6,000〜9,000円 |
| ハンドルコントローラー(エントリー) | 約2.5〜4万円 |
| レーシングコックピット(任意) | 約2〜5万円 |
| PS VR2(任意・没入感アップ) | 約7.5万円 |
| 一式(目安) | 初期 約10〜25万円+以降ほぼ0 |
③ コスパ比較の結論
- 実車:初期 400〜1,000万円 + 毎年 55〜145万円
- ゲーム:初期 10〜25万円 + 以降ほぼ0
ゲーム機材一式は実車のたった1年分の維持費以下でそろい、しかも事故・盗難・天候の心配なし。ハンコン+VRを使えば、ステアリングの重みやATTESAの駆動配分まで、かなり実車に近い感覚で走れます。
「いつか本物のBNR32 V·spec IIを」と思っている人も、それまでの間はGT7でゴジラに乗り続けられます。
まずはハンコンから始めるのが、一番コスパよく“実車感覚”に近づく方法です。
さらに没入感を求めるならVRも。
実車のBNR32に触れる|借りて乗る・集まる
「中古でも手が出ない」「買う前に一度ハンドルを握ってみたい」。BNR32 V·spec II個体はさらに少ないですが、BNR32全体なら借りて乗る・集まって見る方法は今もあります。
🔑 借りて乗る|箱根でBNR32をレンタル
箱根・仙石原の旧車レンタカー「Fun2Drive」では、BNR32スカイラインGT-R(平成4年式・カーボン調ラッピング、HKSマフラー、ニスモ強化アーム、車高調装着の仕様)をレンタルできます。料金は1.5時間14,980円/3時間20,980円/6時間31,980円(2026年時点)。さらに同店では、第二世代GT-R 3台(BNR32+BCNR33+BNR34)の乗り比べパッケージも用意されており、ファンには夢のような体験ができます。
千葉野田のおもしろレンタカーにもR32(白/黒2台。黒は2026年1月にエンジンO/H完了)が、ほかにMR.HIROレンタカーやカーレンタル東京(千葉松戸・1994年式・V·spec II個別表記なし)にもBNR32の在籍があります。
旧車のため貸出状況・料金は変動します。最新は公式でご確認ください。
また、「携帯と同じ会社で回線もまとめたい」という方には、大手キャリアの光回線もおすすめです。
スマホとのセット割で、毎月の料金がさらにお得になることもあります。
お使いのスマホに合わせてチェックしてみてください。
・ドコモの方 → ドコモ光
・auの方 → auひかり
・ソフトバンクの方 → ソフトバンク光
※特典・料金は時期により変わります。最新は各公式サイトでご確認ください。
出典・参考:Fun2Drive(箱根・BNR32)/おもしろレンタカー(千葉野田)。※料金・条件・貸出状況は変動します。最新は公式でご確認ください。
🏁 集まる・見る|R's Meeting 2026
BNR32ファンが集まる最大のイベントは、「R's Meeting 2026」(GT-R Magazine主催)。2026年10月24日(土)9:00〜15:00、富士スピードウェイで開催決定。全世代のGT-R(ハコスカ・ケンメリ・BNR32・BCNR33・BNR34・R35)約5,000台規模が集まる、国内最大級のGT-R集会です。前売3,000円/当日4,000円。BNR32 V·spec IIの個体を生で見られる、貴重な機会です。
※NISMO Festival 2025は中止、2026年方針検討中(2025年9月発表)。日程・出展車・チケット情報は変動するため、最新は主催公式でご確認ください。
出典・参考:GT-R Magazine 公式(R's Meeting)/NISMO 公式。※開催日程・出展内容は変動します。来場前に公式でご確認ください。
BNR32を見て楽しむ|JTC・Godzilla・頭文字D・湾岸
JTCグループA 29連勝伝説|前人未踏の全勝記録
🏁 JTC 1990〜1993・4年連続全勝の全29戦
BNR32の伝説を決定づけたのが、全日本ツーリングカー選手権(JTC)グループAクラスでの全勝記録です。1990年から1993年までの4シーズン、全29戦で1度も負けなかった。これは日本ツーリングカー史上、前人未踏の記録です。
その始まりは、1990年シーズンの開幕戦・西日本サーキット(山口県)。観客約4.1万人を集めたこの一戦で、星野一義/鈴木利男組のカルソニック#12 BNR32がポール・トゥ・ウィンを達成。予選では先代王者のフォードシエラRS500を約1.8秒上回るタイムを叩き出し、「全く別次元のクルマがやってきた」と全国に衝撃が走りました。
各シーズンの年間王者は次の通りです。
- 1990年:カルソニック(星野一義/鈴木利男)
- 1991年:リーボック(長谷見昌弘/A.オロフソン)
- 1992年:リーボック(長谷見昌弘/A.オロフソン)
- 1993年:カルソニック(星野一義/影山正彦)
主要参戦チームはカルソニック・リーボック・ハセミ・JECS・BPトランピオ等。複数のBNR32が予選トップから最後まで上位を支配する展開が4年続き、JTCそのものが「BNR32の独擅場」になりました。1994年からはJGTC(現SUPER GT)へ移行。つまりBNR32が、日本ツーリングカー史の流れを変えてしまった一台だったのです。
なお、第一世代GT-R(ハコスカ=KPGC10)の49連勝はあまりに有名な数字ですが、こちらは1969〜1972年のJAF GP・JAF TS等を通算した記録。BNR32の29連勝はJTCグループAクラス1990〜1993年の通算記録であり、レギュレーションも時代も異なります。連勝数で第一世代GT-Rに肩を並べたわけではなく、ハコスカに「次ぐ」第二世代GT-Rの伝説、という整理が正確です。
出典・参考:NISMO 公式(BNR32 JTC戦績)/全日本ツーリングカー選手権(Wikipedia)。※年間王者の組み合わせ・参戦チームは資料により表記に揺らぎがあるため、主要記録に絞っています。
🌏 「Godzilla(ゴジラ)」二つ名の起源
BNR32を「Godzilla(ゴジラ)」と最初に呼んだのは、オーストラリアの自動車雑誌『Wheels』1989年7月号。記事を執筆したのは英国出身の自動車ジャーナリストPeter Nunn(ピーター・ナン)でした。日本人が当時のBNR32を「お化けもの(Obakemono)」と呼んでいたという話を、英語圏向けに「Nissan's new Godzilla」と翻案。日本生まれの怪獣の名が、そのまま日本のスポーツカーの異名として世界に広まったのです。
この異名はBNR32にとどまらず、BCNR33・BNR34・そして現代のR35まで歴代GT-R全車に受け継がれています。海外メディアが「Godzilla GT-R」と書くたびに、原点はこの1989年のBNR32にある、というわけです。
出典・参考:Nissan Skyline GT-R(英Wikipedia・Godzilla命名の経緯)。※雑誌掲載号・執筆者は『Wheels』編集部および各種自動車史料の記述に依拠しています。
🇩🇪 ニュル開発の起点|約8分20秒台の衝撃
BNR32は、日本車として早い段階でニュルブルクリンク(ノルドシュライフェ)開発を本格採用したスポーツカーでした。1989年の開発時、市販車として約8分20秒台のタイムを記録(資料によりタイムの細部に揺らぎあり)。これは当時、「ポルシェ911ターボと張り合える日本車」として欧州メディアにも衝撃を与えた数字です。
この「ニュルで鍛えるGT-R」の伝統は、BCNR33の「Minus 21 Seconds Romance」(7分59秒目標)、そして現代のR35(公式7分27秒、年式ごとに更新)まで、世代を超えて受け継がれていきます。BNR32は、その起点だったのです。
出典・参考:日産・スカイラインGT-R(Wikipedia・ニュル開発)。※小数点以下の正確なタイム表記は出典が分かれるため「約8分20秒台」と幅で表記しています。
🔧 RB26DETT伝説|チューニング界の絶対王者
BNR32と切っても切れないのが、心臓部のRB26DETT型 2.6L 直列6気筒DOHC 24Vインタークーラー付きツインターボ。1989年のBNR32で初登場し、BCNR33・BNR34まで第二世代GT-R全車に採用された名機中の名機です。
特に語り継がれているのは、鋳鉄ブロックがもたらす圧倒的なチューニング耐性。280PSの自主規制値はあくまで「カタログ上」で、チューナーの手にかかると本領を発揮します。
- Top Secret(永田和彦):1,000PS超のRB26を世に送り出した代表的チューナー
- Veilside:BNR32ベースの1,460PS仕様などで知られる
- HKS:2.8L キャパシティアップキットの定番
- マインズ:2.6L コンプリート約288万円/2.8L 約298万円(2025年・Motor-Fan資料)
- フェニックスパワー・マインズ・JUN・RH9(永田和彦氏のショップ)等、名門ショップが今もRB26を扱う
レース用にはN1ブロック(24U・耐熱強化)やRRRブロックといった強化系譜もあり、N1耐久・スーパー耐久から現代のチューニングシーンまで、RB26は「過給すれば過給するほど応える」エンジンとして君臨し続けています。
出典・参考:日産・RBエンジン(Wikipedia)/Motor-Fan(RB26チューニング)。※チューナー別の最大出力値は仕様・年代・公開情報に基づく代表値で、年式や個体で大きく異なります。
🧠 ATTESA E-TS|「走るスーパーコンピューター」の中身
BNR32の四輪駆動システムATTESA E-TS(Advanced Total Traction Engineering System for All / Electronic Torque Split)は、1989年8月にR32 GT-RとGTS-4で初採用されました。仕組みは、当時としては破格に高度なものでした。
- 通常は後輪駆動ベース。コーナーではFRのように曲がる
- 必要時のみ、最大50:50まで前輪へトルクを配分。スタートとコーナー脱出でトラクションを稼ぐ
- トランスファーケース内の多板湿式クラッチを油圧で制御し、前後の駆動配分を電子制御
- 入力情報は4輪の車輪速センサー+横加速度(G)センサー。後輪のスリップを予測して、滑る前に前輪駆動を加える
当時の自動車雑誌は、この緻密な制御を指して「走るスーパーコンピューター」と評しました。「コーナーではFRのように曲がり、スタートでは4WDのトラクションで蹴り出す」。この二面性こそが、BNR32が新時代を切り拓いた理由です。RB26DETTの圧倒的なパワーを、確実に路面に伝えるための足回り。両者が組み合わさって、はじめて「ゴジラ」が成立したのです。
出典・参考:日産ヘリテージ(ATTESA E-TS)/日産・スカイラインGT-R(Wikipedia・ATTESA E-TS)。
🎬 『頭文字D』中里毅のBNR32 V·spec II
BNR32 V·spec IIを語るとき、外せないのが『頭文字D』の中里毅(なかざと たけし)。彼が駆るのが、まさにBNR32 V·spec IIです。所属チームは「妙義ナイトキッズ」(妙義山が舞台)のリーダー。NISMOフロントバンパーを装着した約380〜400PS仕様のチューンドBNR32で、藤原拓海のAE86と対決する展開は、シリーズ初期の山場のひとつでした。
「頭文字Dの中里毅と言えばBNR32 V·spec II」。これが、V·spec IIがファンに強烈に記憶されている大きな理由のひとつです。
🌃 『湾岸ミッドナイト』秋川零奈のBNR32
もうひとつ、BNR32の象徴的な登場が、楠みちはるの漫画『湾岸ミッドナイト』(連載1990年〜)。連載初期から登場するヒロイン秋川零奈(あきかわ れいな)の愛車が、BNR32スカイラインGT-Rです。同作の象徴的存在「ブラックバード」は島達也のポルシェ911 Turbo 3.6(964型・1993年式)であり、本作内でBNR32と直接バトルする相手車両ではありません(混同されがちな点)。
連載開始がBNR32発売直後(1989年)だったこともあり、本作はBNR32時代の首都高文化をリアルタイムに切り取った貴重な記録になっています。
出典・参考:湾岸ミッドナイト(Wikipedia)。
豪ATCC連覇とGroup A消滅|ゴジラ無双の象徴
BNR32の伝説は、日本国内にとどまりませんでした。海を渡ったオーストラリア。当時のグループA最高峰豪ATCC(オーストラリア・ツーリングカー選手権)で、BNR32は2年連続でチャンピオンを獲得します。
- 1991年:Jim Richards(ジム・リチャーズ)がBNR32でATCCチャンピオン
- 1992年:Mark Skaife(マーク・スカイフ)がBNR32で連覇
- 1991年バサースト1000:BNR32が6時間19分14.8秒でゴール。この記録は2010年まで破られなかった
- 1992年バサースト1000:BNR32が連覇。表彰式でJim Richardsの名物発言「You're a bunch of arseholes」が豪モータースポーツ史に刻まれた
あまりの圧勝に、レギュレーション側は対抗策を打ちます。1991年にBNR32へ15kg、1992年には140kgものウェイトハンデが課されました。それでもBNR32は勝ち続け、ついに豪州内で「ターボ4WDは強すぎる」との議論が起こり、1993年からターボ4WDがGroup Aから締め出され、Group Aレギュレーション自体が消滅するに至ります。「ゴジラ一台のせいで、レースのルールが書き換えられた」。これがBNR32の異名を決定づけた一連の出来事です。
出典・参考:Australian Touring Car Championship(英Wikipedia)/1992 Bathurst 1000(英Wikipedia)。※発言や記録の正確な秒数は出典により表記に揺らぎがあります。
BNR32の本物を見に行く|博物館・コレクション
🇯🇵 日産ヘリテージコレクション(神奈川県座間市)
BNR32の現物を見るなら、まず日産ヘリテージコレクション(神奈川県座間市・座間事業所内・℡046-298-4355)。完全予約制で、約280〜300台の日産歴代車両が常設展示されています。BNR32は、開発主管伊藤修令(「勝つために生まれた」の言葉を残した)の代表作として位置づけられる重要な収蔵車。
※V·spec II固有個体の常時公開状況は車両入替により変動するため、来館前に必ず公式でご確認ください。
出典・参考:日産ヘリテージコレクション 公式。※完全予約制・展示車両は変動します。来館前に公式でご確認ください。
🏔 プリンス&スカイラインミュウジアム(長野県岡谷市)
日本初の単一車種博物館として1997年に開館したプリンス&スカイラインミュウジアム(長野県岡谷市)。歴代スカイラインの実車・パーツ・資料が並ぶ、スカイラインファンの聖地です。BNR32の展示も期待できます(展示替えあり・最新は公式でご確認ください)。
出典・参考:プリンス&スカイラインミュウジアム 公式。※展示状況は変動します。来館前に公式でご確認ください。
📖 この車が登場する漫画『湾岸MIDNIGHT』(全42巻)
BNR32スカイラインGT-Rは、漫画『湾岸MIDNIGHT』で秋川レイナが駆る「Rのヴィーナス」として描かれます。首都高を舞台にした楠みちはるの名作を、全42巻でまとめ読みできます。
📖 この車が登場する漫画『頭文字D』(全48巻)
スカイラインGT-R(BNR32)は、『頭文字D』で妙義ナイトキッズの中里毅が駆るマシンとして描かれます。峠を舞台にした名作を、全48巻でまとめ読みできます。
🎁 手元に置いて楽しむ|モデルカー
手元でBNR32 V·spec IIを楽しむなら、モデルカーも充実しています。プラモデルの最有力は、フジミ1/24「ID-47 R32 GT-R V-SpecII '94」。商品名に「V-SpecII」が明示された数少ないキットで、参考価格2,640円前後。ほかにもハセガワ1/24(型番20496前期/20544中後期/20735 Gr.A/HC39 NISMO/20745 HKS BNR32 Gr.A 1992 JTC)やアオシマ1/24 リーボック R32 GT-R Gr.A '91 JTCチャンピオン仕様、タミヤ24090(V·spec II明示なし)も人気です。
ミニカーは、AUTOart 1/18 R32 V·spec II Tuned Version Gun Grey Metallic(品番77417)が決定版。レジン精密モデルではイグニッションモデル1/18 BNR32 V·spec II 頭文字D中里毅仕様もあります。1/64スケールではTLV-NEO 1/64 R32 GT-R Gr.A プレーン赤(2025/2発売)・LV-N234a カルソニック'91等のミニチュアも近年充実してきました。
📖 原作で楽しむ|コミックス
BNR32の世界を物語で味わうなら、『頭文字D』全48巻(中里毅編はシリーズ序盤の見せ場)と、楠みちはる『湾岸ミッドナイト』全42巻(秋川零奈のBNR32が初期から登場)の2作が決定版です。
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原作漫画『頭文字D』『湾岸ミッドナイト』とあわせて読むと、BNR32の世界がさらに広がります。
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BNR32 V·spec IIのよくある質問
Q. BNR32 V·spec IIとは、どんな車ですか?
A. 日産が1994年2月14日〜10月20日の約8ヶ月だけ生産した第二世代GT-Rの最終進化型。RB26DETT直6ツインターボ・ATTESA E-TS四駆・スーパーHICASを備え、限定1,306台。豪Wheels誌に「Godzilla(ゴジラ)」と命名され、JTCグループAクラス1990〜1993年の全29戦で全勝を成し遂げた伝説の一台です。
Q. V-specとV·spec IIの違いは?
A. 実質的に変わったのはタイヤ1点だけです。V-specの225/50R17から、V·spec IIは245/45R17(ブリヂストン POTENZA RE010)へワイド化・低扁平化されました。ブレンボ4POT/2POTとBBS鍛造17インチはV-spec(1993年2月)からの標準装備で、V·spec IIの新採用ではない点に注意してください。
Q. BNR32 V·spec IIの中古相場はいくらですか?
A. BNR32全体で400万〜1,000万円が目安(2025〜2026年・カーセンサー調べ)。V·spec IIは1,306台限定の希少車のため、上限近くで取引されることが多くなっています。25年ルール解禁(2019〜2020年)以降は北米相場の影響で国内相場も押し上げられています。最新は各中古車ポータルでご確認ください。
Q. JTC 29連勝とは何ですか?ハコスカの49連勝に肩を並べた記録ですか?
A. JTCグループAクラスの1990〜1993年・全29戦で全勝した記録です。ハコスカ(KPGC10)の49連勝は1969〜1972年のJAF GP・JAF TS等の通算で、レギュレーションも時代も異なります。連勝数で第一世代に肩を並べたわけではなく、ハコスカに「次ぐ」第二世代GT-Rの伝説と整理するのが正確です。
Q. 「Godzilla(ゴジラ)」の異名の由来は?
A. 豪『Wheels』誌1989年7月号で、ジャーナリストのPeter NunnがBNR32を「Nissan's new Godzilla」と表現したのが始まり。日本人が呼んでいた「お化けもの(Obakemono)」を英訳で翻案したものです。この異名はBCNR33・BNR34・R35まで歴代GT-R全車に受け継がれています。
Q. グランツーリスモ7でBNR32 V·spec IIに乗れますか?
A. 乗れます。「Nissan Skyline GT-R V·spec II (R32) '94」として収録(PP515.54)。中古車でCr.173,400、またはカフェメニュー#18・エクストラメニュー#13で入手できます。ゲーム内出力は306BHP/39.9kgf·m(実車公称280PS/36.0kgf·mとは書き分け)。収録内容・価格はアップデートで変動します。
Q. 『頭文字D』の中里毅のBNR32は何チームでしたか?
A. 妙義ナイトキッズ(妙義山が舞台)のリーダーです。チューンドBNR32 V·spec II(約380〜400PS仕様・NISMOフロントバンパー装着)で、藤原拓海のAE86と対決します。チーム名は車種名ではなく舞台の山名から取られている点に注意してください。
BNR32 V·spec IIは「16年ぶり復活のゴジラ」最終進化型
日産スカイラインGT-R V·spec II(BNR32)は、ハコスカ・ケンメリから16年の空白を経て1989年に復活した第二世代GT-Rの、最終進化型です。1994年2月から10月までのわずか8ヶ月だけ・1,306台限定で生産された希少車。タイヤを245/45R17へワイド化した実質1点の変更で、V-specをさらに鋭く仕上げた一台でした。
RB26DETTの鋳鉄ブロック直6ツインターボ、ATTESA E-TSの電子制御4WD、スーパーHICASの後輪操舵。「走るスーパーコンピューター」と呼ばれた頭脳と、Top Secret・Veilside・HKS・マインズらチューナーが1,000PS超まで引き上げた潜在力。JTCグループAクラス1990〜1993年・全29戦全勝、豪ATCC連覇、Group A消滅の引き金、ニュル開発の起点、Godzilla命名。どれを取っても、第二世代GT-Rの伝説を象徴する一台です。
実車のV·spec IIは1,306台の希少車で中古相場も高騰していますが、グランツーリスモ7なら「Nissan Skyline GT-R V·spec II (R32) '94」として、維持費を気にせずゴジラの4WDトラクションを味わえます。借りて乗るなら箱根のFun2Drive(第二世代GT-R 3台乗り比べパッケージあり)、集まって見るならR's Meeting 2026年10月24日(富士SW)、現物を見るなら日産ヘリテージコレクションやプリンス&スカイラインミュウジアム。GT7で惚れて、いつか本物に。その入り口として、BNR32 V·spec IIはこれ以上ない一台です。もし「実車を」と思ったら、まずはいま乗っている愛車の価値を調べることから始めてみてください。
GT-Rの系譜とS20源流もチェック|Z432・ハコスカ・BNR34・R35
BNR32 V·spec IIは、長いGT-R系譜のなかの「16年ぶり復活の起点・第二世代の頂点」を担う一台です。源流のS20エンジン(Z432/ハコスカ)、直接の後継BNR34、そして現代の頂点R35。GT-Rの全系譜とあわせてどうぞ。
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