
KTM X-BOW(クロスボウ)は、屋根もドアもフロントガラスもない790kgの公道マシンです。
作ったのは自動車メーカーではありません。オーストリアのバイクメーカー、KTMです。
790kgの車体に、アウディ製の2.0リッターターボが300馬力で載ります。
いまどき300馬力そのものは驚く数字ではありません。この車が特別なのは、その300馬力を790kgで受け止めているという一点です。
グランツーリスモ7には「KTM X-BOW R '12」として収録されています。ブランドセントラルでCr.100,000、GT7の中でもかなり安く買える1台です。
この記事では、バイク屋がなぜ車を作ったのか、790kgという数字がどこから来たのか、日本でいくらだったのか、そしてGT7での走らせ方まで、まとめて掘り下げます。
※収録内容はアップデートで変わることがあります。最新は公式サイトでご確認ください。
バイク屋が出した、790kgという答え
X-BOWを一度でも写真で見ると、たいていの人が同じところで引っかかります。
屋根がない。ドアがない。フロントガラスもない。それでいて、これはレース専用車ではなく公道を走るために作られた車です。
ここから辿るのは、バイクしか作ったことのなかった会社が、どうやって1台の車にたどり着いたのかという話です。
そして、なぜ790kgという数字にこだわり続けたのか。その理由は、後から出た兄弟車の重さを並べると、はっきり見えてきます。
①|KTMは、バイクの会社である
KTMはオーストリアの会社です。創業は1934年。モトクロスやエンデューロといったオフロードバイクの世界では、長く名前の通ったメーカーです。
そのKTMが、2008年のジュネーブモーターショーで1台の四輪車を発表しました。それがX-BOWです。
X-BOWは、KTMにとって初めての四輪車でした。
バイクメーカーが車を作る例そのものは他にもありますが、いきなりカーボンモノコックの2シーターを世に出した会社は多くありません。
車名の「X-BOW」は、英語のcrossbow(クロスボウ/弩)を綴り替えたものです。読み方も「エックスボウ」ではなく「クロスボウ」です。
弓を引き絞って矢を放つ道具の名前を、そのまま車につけた形になります。
②|3つの会社が持ち寄って生まれた
X-BOWは、KTM1社の力で成立した車ではありません。
役割を分けると、こうなります。
- デザイン=KISKA(キスカ)。KTMのバイクのデザインを長く手がけてきた、同じオーストリアのデザイン会社
- シャシー=ダラーラ。イタリアのレーシングカー製造会社。カーボンモノコックを担当した
- エンジンと変速機=アウディ。2.0リッターターボ(TFSI)と6速MTを供給した
注目したいのはダラーラです。
フォーミュラカーやインディカーのシャシーを作ってきた会社で、量販車のメーカーではありません。そこにカーボンモノコックを任せた時点で、この車がどこを向いていたかが分かります。
カーボンモノコックというのは、炭素繊維で作った1つの箱を車体の骨格にする作り方です。鋼板を溶接して組む一般的な車体より軽く、それでいてねじれに強くなります。
2000年代の時点では、スーパーカーでもまだ採用例が限られていた構造でした。
③|790kgは「付けなかったもの」の合計
X-BOWの車重は790kgです。
この数字は、カーボンモノコックだけで達成されたものではありません。普通の車が当たり前に持っているものを、片っ端から付けなかった結果でもあります。
- 屋根がない。オープンコクピットで、乗員は空の下に座る
- フロントガラスがない。標準状態では風はそのまま顔に当たる。ヘルメットが前提の作り
- ドアがない。乗り降りは車体をまたいで行う
- サイドウィンドウもない。雨が降れば、そのまま濡れる
- 荷物を積む場所も、ほぼない
装備を削ったというより、はじめから作らなかったという表現のほうが近い車です。
快適さと引き換えに何が手に入るのかを、そのまま形にしたような1台になっています。
④|ダラーラという会社の位置
シャシーを担当したダラーラについて、もう少し触れておきます。
この会社はイタリアにあり、自社ブランドの市販車を大量に売る会社ではありません。仕事の中心は、他のチームやメーカーのためにレーシングカーの車体を作ることです。
フォーミュラカーやインディカーの世界では、参加する多くのチームが同じ製造元のシャシーを使う仕組みが採られてきました。ダラーラは、その供給側に立ってきた会社です。
言い換えると、カーボンの車体を作る回数が、一般的な自動車メーカーより桁違いに多い会社ということになります。
KTMがここに声をかけた意味は大きく、X-BOWの790kgという数字は、この選択と切り離せません。
2008年の時点でカーボンモノコックを持つ市販車は、価格が桁違いのスーパーカーにほぼ限られていました。バイクメーカーの初めての四輪車がその構造を採用できたのは、作れる会社に外から頼んだからです。
⑤|屋根とドアの値段は、57kgだった
2013年に、X-BOWにフロントガラスとドアを付けたX-BOW GTが追加されました。
サイドウィンドウ、約50リットルの荷物スペース、ワイパー、ウォッシャー、室内の換気と暖房、ガラスの熱線まで付いた仕様です。ようやく「普通の車らしい」装備がそろいました。
その代償が、そのまま数字に出ています。
| 項目 | X-BOW R | X-BOW GT |
|---|---|---|
| 屋根まわり | なし(オープンコクピット) | フロントガラス・ドア・サイドウィンドウ付き |
| 車両重量 | 790kg | 847kg(乾燥重量) |
| 最高出力 | 300hp/6,000rpm | 285hp(210kW)/6,400rpm |
| 最大トルク | 400Nm/3,300rpm | 420Nm/3,200rpm |
| 0-100km/h | 3.9秒 | 4.1秒 |
| 最高速度 | 231km/h | 231km/h |
57kg増えて、0-100km/hは0.2秒遅くなりました。
最高速度は変わりません。空気抵抗ではなく、増えた重さがそのまま加速に効いた形です。
57kgというのは、大人1人ぶんに届かない重さです。それでもタイムには出ます。
X-BOW Rが屋根もドアも付けなかったのは、この0.2秒を渡したくなかったからだと考えると、話の筋が通ります。
⑥|300馬力より、790kgのほうが効いている
X-BOW Rの出力は300馬力(約304PS)です。
これを重さで割ると、1馬力あたり約2.6kg。裏返すと、1トンあたり約380馬力という計算になります。
同じ300馬力でも、1,500kgの車なら1馬力あたり5kgです。
数字の上では、X-BOWは「同じ馬力で、半分の重さを動かしている」ことになります。加速も、止まるときも、向きを変えるときも、その差がそのまま出てきます。
この考え方が正しいことは、後継モデルが証明しています。
2022年に登場したX-BOW GT-XRは、キャノピー(屋根)を備えた公道仕様で、出力は493馬力まで上がりました。ところが車重は1,250kgです。
| モデル | 最高出力 | 車両重量 | 1馬力あたりの重さ |
|---|---|---|---|
| X-BOW(ベース) | 237hp | 790kg | 約3.33kg |
| X-BOW R | 300hp | 790kg | 約2.63kg |
| X-BOW GT | 285hp | 847kg | 約2.97kg |
| X-BOW GT-XR(2022年) | 493hp | 1,250kg | 約2.54kg |
GT-XRは、Rより193馬力も多いのに、1馬力あたりの重さは約2.54kgです。Rの約2.63kgと、ほとんど差がありません。
出力を1.6倍にしても、同時に460kg重くなったからです。
11年かけて手に入れた193馬力ぶんの進歩を、屋根と快適装備がほぼ食べてしまった。そう読める並びになっています。
2011年のX-BOW Rが790kgで出した答えが、いかに割の良いものだったかが分かります。
⑦|レースの舞台では、専用の仕様が走った
X-BOWには、公道向けとは別に競技向けの仕様が用意されました。
KTM自身が「KTM X-Bow Battle」というワンメイクレース(同じ車種だけで競うシリーズ)を運営していた時期があり、そこでは競技専用のX-BOW RRが使われました。
同じ車だけが並ぶレースは、車の性能差が結果に出にくく、走らせ方の差がそのまま順位になります。
車を売るだけでなく、その車で競う場まで用意したという点に、バイクレースで長くやってきた会社らしさが出ています。
速さの記録も残っています。ドイツ人ドライバーのクリストファー・ハーゼがニュルブルクリンク北コースで記録したタイムは7分25秒72とされます。
ただし、この記録を出した車を「RR」と書く資料と「R」と書く資料の両方があります。競技専用仕様であることは一致していますが、呼び名の表記は割れています。
その後、2015年に登場したクローズドコクピットのGT4は、世界各地のGT4カテゴリーで長く戦い続けました。
屋根のない公道車から始まったこの車が、屋根を付けて本格的なレースカテゴリーに定着したという流れになります。
⑧|スペック(X-BOW R)
| 正式名称 | KTM X-BOW R(クロスボウ アール) |
|---|---|
| 製造 | 2011年〜(ベースのX-BOWは2008年〜)/オーストリア・グラーツで組み立て |
| 開発体制 | デザイン:KISKA/シャシー:ダラーラ/エンジン・変速機:アウディ |
| エンジン | アウディ製 直列4気筒 DOHC ターボ(2.0 TFSI)・横置きミッドシップ |
| 排気量 | 1,984cc |
| 最高出力 | 300hp(約304PS)/6,000rpm ※GT7の表記は298BHP |
| 最大トルク | 400Nm/3,300rpm |
| 変速機 | 6速MT |
| 駆動方式 | MR(ミッドシップ・後輪駆動) |
| 車両重量 | 790kg |
| 0-100km/h | 3.9秒 |
| 最高速度 | 231km/h |
| 全長×全幅×全高 | 3,738×1,915×1,202mm |
| ホイールベース | 2,430mm |
| ボディ | 屋根・フロントガラス・ドアなし(オープンコクピット) |
| GT7での分類 | PP595.86/ブランドセントラル Cr.100,000 |
※出力はモデルによって数字が分かれます。理由はFAQで説明しています。
⑨|系譜|X-BOWの歩み
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1934年 | KTMがオーストリアで創業。オフロードバイクのメーカーとして知られていく |
| 2008年 | ジュネーブモーターショーでX-BOWを発表。KTM初の四輪車 |
| 2008年〜 | 需要に対応するため、グラーツ近郊に新しい工場を用意して生産 |
| 2011年 | X-BOW R登場。エンジンを300hpへ引き上げ |
| 2013年 | X-BOW GT登場。フロントガラス・ドア・サイドウィンドウを追加(847kg) |
| 2015年 | X-BOW GT4登場。ライター・エンジニアリングと組んだクローズドコクピットのレース専用仕様。出力は資料により360〜375hpと幅がある |
| 2022年 | X-BOW GT-XR登場。キャノピー付きの公道仕様で493hp・1,250kg |
生産計画は当初、年500台の予定でした。実際には需要が上回り、年1,000台まで引き上げられたと伝えられます。
屋根もドアもない車としては、決して小さくない数字です。
日本にも正規輸入されていた
X-BOWは、輸入車マニアだけが知る並行輸入の車ではありませんでした。
日本には正規の輸入元があり、カタログと価格表が用意されていました。
日本向けの公式サイトに掲載されていた価格表では、当時の車両本体価格はこうなっていました。
| モデル | 車両本体価格(消費税8%込) |
|---|---|
| X-BOW R | 13,122,000円 |
| X-BOW GT | 14,202,000円 |
消費税8%という表記から、2014年4月から2019年9月までの時期の価格表と分かります。
屋根もドアもない2シーターに1,300万円台。この金額をどう受け取るかは、人によって割れるところです。
日本の輸入元は、2016年6月に4台限定の特別仕様も出しています。
2015年モデルのX-BOW Rをベースに、通常は選べない「Weiss-Orange(バイスオレンジ)」の塗装を無償で採用し、エンジンは252kW(342.6PS)/6,585rpmまでチューンナップ。価格は9,990,000円でした。
標準のX-BOW Rが13,122,000円ですから、出力を上げたうえで313万円ほど安い設定です。
限られた台数の在庫を整理する意味合いもあったとみられますが、結果として最も速いX-BOW Rが最も安い、という珍しい価格表になりました。
現在、日本向けの公式サイトには「新規オーダーは終了しました(国内在庫なし)」と記載されています。
新車として買う道は、すでに閉じています。
日本で数が出にくかった理由
価格だけを見れば、1,300万円台の輸入スポーツは他にもあります。
X-BOWが日本で数を伸ばしにくかったのは、金額そのものより使い方の制約によるところが大きいと考えられます。
- 雨に弱い。屋根がないので、天気予報を見てから出す車になる
- 屋外に置いておけない。屋内保管かカバーが前提で、駐車場の条件が厳しくなる
- ヘルメットが要る。標準状態ではフロントガラスがないため、気軽に近所まで、という使い方から遠い
- 荷物が積めない。買い物にも旅行にも使えないので、他に日常用の車が必要になる
つまり「2台目以降の車」としてしか成立しにくいという性格です。
1,300万円台という金額に、そこまでの割り切りが要求されると考えると、台数が限られたのは自然な流れでした。
台数が少なく、比較対象がない
X-BOWの中古を考えるとき、通常の輸入車とは事情が違います。
理由は3つあります。
- 日本に入った台数がもともと少ない。同時期の輸入スポーツカーと比べても母数が小さく、売り物が常時あるとは限らない
- 車検と整備を受けられる場所が限られる。専門の輸入元・ディーラー系の窓口が前提になる
- 比較できる同型車が市場に並びにくい。何台も見比べて相場観をつくる、という買い方がしにくい
こうした条件では、金額よりも「いま出ている個体がどんな素性か」のほうが判断材料になります。
走行距離、保管状態、これまでどこで整備を受けてきたか。台数が少ない車ほど、この部分の差が金額の差より大きく効いてきます。
中古で個体を検討するとき、この車で特に見ておきたいのは次のような点です。
- カーボンモノコックの状態。車体の骨格そのものなので、ここに損傷があると修理の難度と費用が一般的な車と別物になる
- 整備をどこで受けてきたか。正規の窓口で見てもらってきた個体かどうかで、その後の部品調達のしやすさが変わる
- 保管の履歴。屋根のない車なので、屋内で保管されていたかどうかが内装や電装の状態に出やすい
- 走行距離よりも、動かしていた頻度。長く止めたままだった個体は、距離が少なくても手を入れる箇所が出やすい
※価格は個体の状態・仕様・時期・為替によって大きく変わります。最新の実勢は各販売店の掲載情報でご確認ください。
グランツーリスモ7のX-BOW R
GT7には「KTM X-BOW R '12」として収録されています。
入手先はブランドセントラルで、価格はCr.100,000です。レジェンドカーディーラーのように入れ替わりを待つ必要がなく、いつでも買えます。
| GT7での車名 | KTM X-BOW R '12 |
|---|---|
| 入手先 | ブランドセントラル |
| 価格 | Cr.100,000 |
| PP | 595.86 |
| 最高出力 | 298BHP/6,000rpm |
| 車両重量 | 790kg |
| 駆動方式 | MR(ミッドシップ・後輪駆動) |
| 吸気 | ターボ |
| 排気量 | 1,984cc |
Cr.100,000でPP595.86という置き場所
GT7を遊んでいる人にとって、この車のいちばん分かりやすい価値は値段とPPの釣り合いです。
Cr.100,000は、GT7の車の中ではかなり安い部類に入ります。それでPPは595.86あります。
GT7のレースには、参加できる車の上限をPPで決めているものが多くあります。595.86は600という上限の内側ですから、買ってきたそのままの状態で600PPの枠に入れられる計算になります。
チューニングで持ち上げる手間も、逆に落とす手間も要りません。
同じPPでも、中身が違う
PPというのは、車の速さをまとめて1つの数字にしたものです。
問題は、同じ数字に届く道が何通りもあることです。
- 馬力で積み上げた595PP:500馬力を1,500kgで運ぶ。直線が速く、ブレーキと旋回で苦しむ
- 軽さで積み上げた595PP:298馬力を790kgで運ぶ。直線は伸びないが、止まる・曲がるが速い
X-BOW Rは、はっきり後者です。
最高速で殴り合う車ではありません。ブレーキングを遅らせて、コーナーの速度を落とさずに抜けていくことで差をつける車です。
同じ600PP帯のレースに出たとき、直線で抜かれて、次のコーナーで抜き返す。そういう走り方になりやすい1台です。
どのコースで強みが出るか
軽さで積み上げたPPの車は、コースを選びます。
X-BOW Rの取り柄が出やすいのは、次のような条件がそろった場所です。
- コーナーの数が多い:曲がる回数が多いほど、軽さの利点が積み上がる
- ブレーキングポイントが多い:止まる回数が多いほど、790kgが効いてくる
- 長い直線が少ない:298馬力では、直線の長いコースで馬力型の車に離される
- 路面の起伏が少ない:軽い車体は跳ねやすく、荒れた路面では姿勢が乱れやすい
逆に、長いストレートが何本もあるコースでは、同じPPでも馬力を積んだ車に置いていかれます。
その場合は、抜かれることを前提にして、ブレーキング区間で確実に取り返す組み立てに切り替えると噛み合ってきます。
チューニングをどう考えるか
PPが595.86という位置は、触らずに使うのがいちばん素直な設定です。600という上限のすぐ内側にあるので、少し手を入れるだけで枠から出てしまいます。
それでも調整するなら、出力を上げる方向より、タイヤと足まわりを詰める方向のほうがこの車の性格に合います。
もともとの持ち味がコーナーの速度である以上、そこを伸ばすほうが、直線の不足を補おうとするより結果につながりやすくなります。
重量の軽量化については、素の状態ですでに790kgです。
ここからさらに削るより、790kgをどう使うかを覚えるほうが、タイムには早く効いてきます。
X-BOWと比べてみたい3台
軽さで速く走るという考え方は、X-BOWだけのものではありません。
同じ方向を向きながら、どこかで折り合いを付けた車と比べると、X-BOWがどれだけ極端かが分かります。
| 車種 | どこが同じか | どこが違うか |
|---|---|---|
| アルファロメオ 4C | ダラーラ製のカーボンモノコック。軽さを骨格から取りにいった点が同じ | 屋根もドアもガラスもある。日常で使える形に落とし込んでいる |
| アルピーヌ A110 | 馬力より軽さを選び、コーナーの速度で走る性格 | カーボンではなくアルミ中心の車体。快適装備を残したうえで軽さを狙った |
| ポルシェ ケイマン GT4 | ミッドシップで、サーキットを強く意識した作り | 重さを受け入れたうえで、出力とダウンフォースで速さを出す方向 |
この3台はいずれも、どこかで快適さや実用性と折り合いを付けています。
X-BOWだけが、そこを折り合わずに790kgまで行きました。
GT7なら、この4台を続けて乗り比べられます。
同じコースを1周ずつ走ってみると、790kgという数字が体感としてどう出るのかが分かりやすくなります。
走らせ方のコツ
コツ1|ブレーキを遅らせすぎない
790kgは止まるのが得意です。ただし、得意だからといって毎回ぎりぎりまで我慢すると、タイヤの前後の荷重が急に動きます。軽い車ほど、動いた荷重が姿勢に出るのが速いところがあります。
コツ2|コーナーの真ん中で速度を残す
この車の取り柄は、曲がっている最中の速度です。手前で落としすぎると、直線の遅さだけが残って良いところが出ません。入口を丁寧に、真ん中を速く、が基本になります。
コツ3|立ち上がりでアクセルを一気に開けない
MRで車重が軽く、しかもターボです。低い回転から急に力が出ると、後ろが外へ出ます。ハンドルを戻しながら、踏む量を増やしていくと安定します。
コツ4|横風とスリップストリームに気をつける
軽い車体は、外からの力の影響を受けやすくなります。前の車の後ろにぴったり付いたとき、車体が落ち着かないことがあります。高速コーナーでは車間の取り方を1台ぶん変えるだけで安定します。
駆動方式ごとの特徴は、まとめ記事でも解説しています。
🎮 まとめGT7のMR(ミッドシップ)車まとめエンジンを真ん中に積んだ車の性格を、収録車から読み解きます。 🎮 まとめGT7のターボ車まとめ過給機つきのエンジンをまとめて見比べられます。軽い車ほど、指先では追いつかない
X-BOW Rのように軽い車は、入力に対する反応が速くなります。
コントローラーのスティックだと、姿勢が動きはじめてから戻すまでの間に、必要な操作量を超えてしまうことがあります。
ハンドルコントローラーなら、手で握った角度がそのまま車の向きになります。戻す量を少しずつ調整できるようになると、軽い車の落ち着かせ方が変わってきます。
ペダルも同じで、踏む量を足で決められると、790kgの車体の荷重を自分で置きにいけるようになります。
<まず必須>これがあれば、すぐにGT7で走り出せる
GT7を遊ぶ土台です。
PS5本体・GT7ソフト・ディスクドライブがあれば走り出せます。
さらにハンコンを足せば、"自分でハンドルを握る"運転体験に。
<あるとより実車に近づく>足すほど没入感が一段ずつ上がる
ここから先は"より実車に近づく"ための投資。
コックピットで姿勢が決まり、シフトで操作感が増し、VRで視界ごと没入できます。
※機材価格・在庫は時期・モデルによって変わります。最新の金額は各販売店でご確認ください。
🕹️ 機材GT7おすすめハンコン比較予算別に選び方をまとめています。実車を追いかける vs ゲームで乗る
① 実車のX-BOW Rを維持する場合の年間目安
国内在庫がないため、まず個体を見つけるところから始まります。
そのうえで、屋根のない輸入スポーツを日本で維持するとどうなるか、費目ごとに並べます。
| 項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 自動車税(2.0L級・年式により重課) | 約4〜5万円 |
| 任意保険(輸入希少車・車両保険込み) | 約10〜25万円 |
| 車検(2年分を1年換算・専門店前提) | 約10〜20万円 |
| 整備・部品(輸入元経由・専用部品) | 約15〜50万円 |
| 駐車場・保管(屋根がないため屋内保管が前提) | 約15〜40万円 |
| 燃料・タイヤ・消耗品 | 約10〜25万円 |
| 年間合計(目安) | 約64〜165万円 |
ここに車両の購入費が加わります。
屋根がない車は屋外に置きっぱなしにできないため、保管場所の確保が他の車より重い前提になる点が特徴です。
② GT7で味わう場合の機材コスト
| 機材 | 価格の目安 |
|---|---|
| PS5本体 | 約6.6〜8万円 |
| グランツーリスモ7(ソフト) | 約6,000〜9,000円 |
| 車両購入(Cr.100,000) | プレイ内で稼げば実質0円 |
| ハンドルコントローラー(エントリー) | 約2.5〜4万円 |
| レーシングコックピット(任意) | 約2〜5万円 |
| 一式(目安) | 初期 約9〜17万円+以降ほぼ0 |
一度そろえれば、あとは電気代くらいです。雨を気にする必要も、保管場所を探す必要もありません。
③ 結論
- 実車:購入費(国内在庫なし・個体探しから)+ 毎年およそ64〜165万円
- ゲーム:初期9〜17万円 + 以降ほぼ0(車両はCr.100,000でゲーム内入手)
X-BOW Rは、GT7の中ではCr.100,000という安い部類の価格でPP595.86が手に入る1台です。実車では屋内保管まで含めた費用がかかる車を、機材一式そろえた範囲で走らせられます。
屋根のない790kgの車を日本で維持する手間を考えると、この車ほどゲームで乗る意味が大きい1台も多くありません。
雨の心配も、保管場所の心配もなく、ヘルメットなしで乗れます。
「GT7をきっかけに、軽くて速いスポーツカーに興味が出た」。そんな方こそ、いま乗っている愛車の"本当の価値"を知っておきませんか。中古車相場が動いている今は、手放す側にとっても追い風です。
※査定額・中古相場は車種・年式・走行距離・時期によって変動します。実際の金額は査定でご確認ください。
日本で現物を見られる場所
X-BOWは台数が少ないため、街で偶然すれ違うことはほとんど期待できません。
それでも、現物に会える場は残っています。
- 輸入車の大型イベント:国内で開かれる欧州車のミーティングや、輸入車の展示会に持ち込まれることがある
- サーキットの走行会:もともとサーキット向けの性格が強い車なので、走行枠に入っている確率は街より高い
- 本国の工場見学:オーストリアのKTMには、バイクを含めたブランドの展示施設がある
現物を前にして最初に驚くのは、たいてい全高の低さです。
1,202mmという数字は、普通のセダンの屋根よりミラーの位置に近い高さになります。写真では伝わりにくい部分です。
※イベントの開催内容・出展車両は年により変わります。訪問・観覧前に各公式サイトでご確認ください。
手元に置いて楽しむ|X-BOWのモデルカー
実車に会える機会が少ないぶん、模型で形を確かめるという楽しみ方が向いている車です。
むき出しのカーボンモノコック、外に張り出したサスペンション、屋根のないコクピット。X-BOWの造形は、縮尺を小さくしても分かりやすく残ります。
市販車のX-BOW Rそのものを再現した完成品モデルは数が限られます。流通が多いのは、レース仕様のGT4やGT2を再現したモデルです。
下のモデルはX-BOW GT4のレース仕様(2020年 ニュルブルクリンク24時間 カップXクラス優勝車)で、市販のRとはボディが異なります。屋根のないRとは別物である点は、選ぶときに確認してください。
1/43スケールでも、外に出たサスペンションアームの造形までは残ります。
棚に置いて、790kgという数字がどんな形をしていたのかを思い出すきっかけにしてみてください。
X-BOWの居場所を、他の車と並べて確かめる本
X-BOW1台だけを扱った日本語の書籍は、ほとんど流通していません。
そのかわり、同じ時代のスポーツカーを横に並べた図鑑を開くと、この車の立ち位置が見えやすくなります。
300馬力という出力が当時どのくらいの水準だったのか。790kgがどれだけ例外的だったのか。
数字は、比べる相手があってはじめて意味が分かります。下の図鑑は世界の高性能車を150台まとめたもので、X-BOWの掲載を保証するものではありませんが、同時代の車と見比べる下敷きとして使えます。
KTM X-BOWのよくある質問
Q. X-BOWは何と読むのですか?
A. 「クロスボウ」と読みます。英語のcrossbow(弩/ボウガン)を綴り替えた車名で、「エックスボウ」ではありません。弓を引き絞って矢を放つ道具の名前を、そのまま車につけたものです。
Q. KTMはバイクのメーカーではないのですか?
A. バイクのメーカーです。1934年創業のオーストリアの会社で、モトクロスやエンデューロといったオフロードバイクで知られています。X-BOWは、そのKTMが手がけた初めての四輪車です。2008年のジュネーブモーターショーで発表されました。
Q. 屋根もドアもないのに、公道を走れるのですか?
A. 走れます。欧州でナンバーが取れる仕様として売られていた車で、日本にも正規輸入されていました。ただしフロントガラスがない標準状態では風を直接受けるため、ヘルメットの着用が前提の乗り物になります。
Q. X-BOW RとX-BOW GTは何が違うのですか?
A. GTはRにフロントガラス、ドア、サイドウィンドウ、約50リットルの荷物スペース、ワイパーや暖房などを追加した仕様です。そのぶん重くなり、Rの790kgに対してGTは847kg(乾燥重量)、0-100km/hはRの3.9秒に対して4.1秒になります。最高速度はどちらも231km/hです。
Q. 出力が300hpだったり285hpだったりするのはなぜですか?
A. モデルごとに数字が違うためです。X-BOW Rが300hp、X-BOW GTが285hp、ベースのX-BOWが237hpです。同じ車の数字が揺れているのではなく、それぞれ別のモデルの値になります。GT7の表記が298BHPなのは、単位と計測条件の違いによるものです。
Q. 日本で買えたのですか。いくらでしたか?
A. 正規輸入されていました。日本向けの価格表では、X-BOW Rが13,122,000円、X-BOW GTが14,202,000円(いずれも消費税8%込)です。2016年6月には、342.6PSにチューンナップした4台限定の特別仕様が9,990,000円で販売された記録もあります。現在は日本向け公式サイトに「新規オーダーは終了しました(国内在庫なし)」と記載されています。
Q. なぜ790kgという軽さが実現できたのですか?
A. 2つの要素が重なっています。ひとつはレーシングカー製造で知られるダラーラが手がけたカーボンモノコックです。もうひとつは、屋根、フロントガラス、ドア、サイドウィンドウ、荷物スペースといった装備をはじめから作らなかったことです。後から屋根とドアを付けたX-BOW GTが57kg重くなっている点からも、装備を持たないことが軽さに効いていたと分かります。
Q. GT7ではどこで買えますか。いくらですか?
A. ブランドセントラルで購入できます。価格はCr.100,000です。レジェンドカーディーラーのように入れ替わりを待つ必要がなく、いつでも買えます。
Q. GT7では初心者でも扱えますか?
A. 扱いやすい部類ですが、慣れは要ります。790kgと軽いためブレーキが短く済み、コーナーでも向きが変わりやすい一方で、MRでターボという組み合わせのため、立ち上がりで急にアクセルを開けると後ろが外へ出ます。ハンドルを戻しながら踏む量を増やしていくと安定します。
Q. 後継のX-BOW GT-XRとはどんな車ですか?
A. 2022年に登場した公道仕様で、キャノピー(屋根)を備えます。出力は493hpまで上がりましたが、車重は1,250kgです。X-BOW Rと比べると193hp多いものの、1馬力あたりの重さは約2.54kgで、Rの約2.63kgとほとんど変わりません。出力の増加分を、増えた460kgがほぼ相殺した形になります。
付けなかったから、速かった
- KTMはバイクのメーカー。1934年創業のオーストリアの会社で、X-BOWは初の四輪車
- 3社の持ち寄りで生まれた。デザインはKISKA、カーボンモノコックはダラーラ、エンジンと変速機はアウディ
- 790kgは「付けなかったもの」の合計。屋根・フロントガラス・ドア・サイドウィンドウ・荷物スペースを、はじめから作らなかった
- 屋根とドアの値段は57kg。それを付けたX-BOW GTは847kgになり、0-100km/hが0.2秒遅くなった
- 日本にも正規輸入されていた。X-BOW Rが13,122,000円(消費税8%込)。現在は新規オーダー終了
- GT7ではCr.100,000でPP595.86。買ったそのままの状態で600PPの枠に入る
300馬力という数字だけを見れば、X-BOW Rは特別な車ではありません。
特別なのは、その300馬力を790kgで受け止めているという一点です。
後から出たGT-XRが493馬力まで出力を上げても、1馬力あたりの重さはほとんど変わりませんでした。屋根と快適装備で460kg増えたからです。
2011年のX-BOW Rが出した「何も足さない」という答えが、11年たっても割の良いものだったことを、この数字が示しています。
GT7では、Cr.100,000という安い部類の価格でこの1台が手に入ります。
直線で抜かれても、次のコーナーで抜き返す。そういう走り方が好きな方は、ブランドセントラルで一度手に取ってみてください。790kgがどういうことなのか、1周でわかります。










