
「ドロドロ」でも「ヒューン」でもない、あの澄んだ回転音。GT7(グランツーリスモ7)には、直列6気筒(直6)エンジンを積んだ車が数多く収録されています。直6は、シリンダー(気筒)を一直線に6つ並べたエンジン形式で、V型6気筒やV型8気筒とは違う「回した時の滑らかさ」を武器にしてきました。BMWが自社の直6を誇らしげに「シルキーシックス」と呼ぶように、この形式には独特の気持ちよさがあります。
この記事では、直6という形式そのものが持つ「滑らかさの理由」から、日産のS20型・RB26DETTからトヨタの2JZ-GTEへと受け継がれた日本の直6伝説、BMWのM30型からS55型・B58型へと続く「シルキーシックス」の系譜、そしてGT7に収録された直6車19台まで、まとめて解説します。「あの回り方が好き」という方はもちろん、「直6って結局なにがすごいの?」という方にも読んでいただける内容です。
目次
直列6気筒(直6)とは|なぜ「シルキーシックス」と呼ばれるのか
直列6気筒エンジンとは、シリンダーを一直線に6つ並べた「直6(ちょくろく)」または「直列6気筒(インライン6)」と呼ばれるエンジン形式です。V型6気筒がシリンダーをV字に2列(片側3気筒ずつ)配置するのに対し、直6は1列にすべて並べます。シリンダーヘッドやカムシャフトが1系統で済むため、V型に比べて構造がシンプルになりやすいという特徴もあります。
- 理論上の完全バランス:回転や往復運動による振動(一次振動・二次振動)が、理屈のうえではどちらも打ち消し合ってゼロになる、数少ないエンジン形式のひとつ
- 構造のシンプルさ:シリンダーヘッド・カムシャフト・排気系統が1系統で済み、V型のように2バンク分を管理する複雑さがない
- 弱点は全長:気筒を一直線に6つ並べる以上、エンジンの全長がどうしても長くなりやすい
「揺れがゼロになる」と言われても、ピンとこない方も多いと思います。噛み砕いて言うと、直6のクランクシャフトは等間隔(120度ごと)でピストンが動くように設計されています。前半の3気筒が動く力と、後半の3気筒が動く力が、ちょうど鏡に映したように逆向きのタイミングで発生する仕組みです。だから前後で押し合う力・引っ張り合う力がそのつど打ち消し合い、振動がほとんど出ません。振動を打ち消す補助部品(バランスシャフト)を追加しなくても高回転までスムーズに回る、というのがこの形式最大の武器で、BMWが自社の直6を「シルキーシックス」と呼んできたのも、この物理的な特性が理由です。
これほど滑らかな直6ですが、現在の市販車では少数派です。理由は単純で、気筒を一直線に6つ並べる以上、エンジンが長くなってしまうから。前輪より前のエンジンルームに収めようとすると車体の前が重くなりやすく、衝突安全基準で求められるクラッシュゾーン(衝撃を吸収するつぶれるスペース)の確保も難しくなります。加えて、現代の量産車の主流である「横置きFF」はエンジンルームの横幅に制約があり、長い直6を積むのは現実的ではありません。こうした事情から、コンパクトなV型6気筒が主流になり、直6は「積める車が限られる、贅沢なレイアウト」という位置づけに変わっていきました。
出典・参考:Wikipedia「直列6気筒」「エンジンバランス」、BMW公式資料ほか。振動特性の評価は設計・年式で幅があり、諸説あります。
日本の直6伝説|S20型からRB26・2JZへ受け継がれた血脈
日本の直6は、1970年式のスカイライン2000GT-R(KPGC10・ハコスカ)から始まりました。レース用エンジンをベースにしたDOHC直6のS20型を積み、ツーリングカーレースで49連勝を記録して「GT-R」を伝説に押し上げています。この系譜は1989年、新開発の直6ツインターボRB26DETTを積んだR32型GT-Rで復活し、電子制御4輪駆動ATTESA E-TSとともに国内ツーリングカー選手権を29連勝で席巻して「ゴジラ」と呼ばれました。
一方トヨタも独自に直6ターボを磨き、1997年式のスープラ RZ(JZA80)で2JZ-GTEを確立します。RB26DETTと2JZ-GTEはどちらも「頑丈で懐の深いエンジン」として知られ、湾岸ミッドナイトや頭文字D、海外の『ワイルド・スピード』シリーズを通じてJDM(日本国内向け仕様車)文化を象徴する存在として世界に広まりました。そして2002年、直6を積む最後のGT-RとなったGT-R V·spec II Nür(BNR34)で、この物語はひとつの区切りを迎えます。
出典・参考:Wikipedia「日産・S20型エンジン」「日産・RB型エンジン」「トヨタ・JZ型エンジン」、各社公開資料ほか。連勝記録やチューニング耐性の評価は複数のメディアで語られていますが、諸説あります。
BMWのシルキーシックス|M30型からS55・B58への系譜
BMWの直6は1968年のM30型に始まり、軽量化に振り切った3.0 CSL(E9)がETCC(ヨーロッパ・ツーリングカー選手権)を制し、2003年のM3(E46型)が積むS54型は高回転までの吹け上がりから「シルキーシックスの完成形」と評されました。2000年代後半のダウンサイジングの波で直6は一度絶滅しかけますが、S55型とB58型がこれを復権させます。B58型は直4エンジンの設計をそのまま1.5倍に引き伸ばすモジュラー設計で開発コストを抑え、2020年に17年ぶり復活したGRスープラ RZ(DB02)にも積まれました。トヨタとBMWの共同開発が、日本とドイツ、2つの直6伝説を交わらせています。
出典・参考:Wikipedia「BMW・M30型エンジン」「BMW・S54型エンジン」「BMW・B58型エンジン」「BMW・3.0CSL」、BMW/トヨタ公式資料ほか。諸説あります。
GT7で直6車を走らせるコツ|滑らかさとフロント寄りの重さ
- ①低回転からの粘り:直6は理論上の振動が少ないぶん、低回転域でもエンジンが荒れにくく、アクセルを一定に踏んでいるだけでもスムーズに速度が乗っていく感覚を得やすい形式です
- ②ターボの伸びの長さ:RB26DETT・2JZ-GTE・S55型といったターボ付き直6は、過給が乗り始めてからの加速がひと呼吸長く続く傾向があり、ブーストが立ち上がるタイミングを意識するとコーナー立ち上がりが安定しやすくなります
- ③フロント寄りの重量バランス:直6はエンジンが長いぶん、前輪より前に張り出して搭載されがちで、FR(後輪駆動)の直6車はやや前が重くなりやすい傾向があります
とくに③は、GT-R系やスープラ系のFR直6車を速く走らせるうえで押さえておきたいポイントです。フロントが重い車は、コーナー進入でいきなりアクセルを踏むとアンダーステア(曲がりたい方向に曲がらず外側に膨らむ現象)が出やすくなります。ブレーキングでしっかりノーズを内側に向けてから、車体の向きが変わったのを確認してアクセルを踏み込む、という順番を意識すると、直6車ならではの重さを味方につけやすくなるでしょう。
【一覧表】GT7の直列6気筒エンジン車 19台
ここでは「日産」「トヨタ」「BMW」「英国勢」の4グループに分けて、代表的な19台をまとめました。
🇯🇵 日産|S20型からRB26DETTへ(8台)
| GT7収録車 | 型式・エンジン | 年代 | 国・メーカー | ひとこと特徴 |
|---|---|---|---|---|
| スカイライン2000GT-R(KPGC10・ハコスカ) | S20型 | 1970年 | 日本・日産 | ツーリングカー49連勝の原点 |
| スカイライン2000GT-R(KPGC110・ケンメリ) | S20型 | 1973年 | 日本・日産 | 生産わずか197台の幻のGT-R |
| フェアレディZ432(PS30) | S20型 | 1969年 | 日本・日産 | GT-Rと同じ心臓を積んだZ |
| フェアレディ240ZG(HS30) | L24型 | 1971年 | 日本・日産 | 北米市場が育てたGノーズ |
| スカイラインGT-R NISMO(BNR32) | RB26DETT | 1990年 | 日本・日産 | 限定500台のホモロゲスペシャル |
| スカイラインGT-R V·spec II(BNR32) | RB26DETT | 1994年 | 日本・日産 | 「ゴジラ」JTC29連勝 |
| スカイラインGT-R V·spec(BCNR33) | RB26DETT | 1997年 | 日本・日産 | ニュル「-21秒の浪漫」 |
| スカイラインGT-R V·spec II Nür(BNR34) | RB26DETT | 2002年 | 日本・日産 | 直6最後のGT-R |
🇯🇵 トヨタ|7Mから2JZ・B58へ(3台)
| GT7収録車 | 型式・エンジン | 年代 | 国・メーカー | ひとこと特徴 |
|---|---|---|---|---|
| スープラ 3.0GTターボA(A70型) | 7M-GTEU | 1980年代 | 日本・トヨタ | グループA参戦用ホモロゲモデル |
| スープラ RZ(JZA80) | 2JZ-GTE | 1997年 | 日本・トヨタ | 世界的チューニングベース |
| GRスープラ RZ(DB02) | B58型 | 2020年 | 日本・トヨタ | BMW共同開発で17年ぶり復活 |
🇩🇪 BMW|M30型からS54・S55型へ(5台)
| GT7収録車 | 型式・エンジン | 年代 | 国・メーカー | ひとこと特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0 CSL(E9・無印) | M30型 | 1971年 | ドイツ・BMW | 軽量化だけで勝負した無印CSL |
| 3.0 CSL(E9・バットモービル) | M30型 | 1973年 | ドイツ・BMW | ETCC・デイトナを制した羽根 |
| M3(E46型) | S54型 | 2003年 | ドイツ・BMW | シルキーシックスの完成形 |
| M4(F82) | S55型 | 2014年 | ドイツ・BMW | M3から分かれた新しい名前 |
| M2 Competition(F87) | S55型 | 2018年 | ドイツ・BMW | M3/M4の心臓を積む小さな暴れん坊 |
🇬🇧 英国|自社製直6のこだわり(3台)
| GT7収録車 | 型式・エンジン | 年代 | 国・メーカー | ひとこと特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ジャガー E-type | XK型 | 1961年 | 英国・ジャガー | フェラーリの半額で世界に衝撃 |
| TVR タスカン Speed 6 | Speed Six | 2000年前後 | 英国・TVR | ABSもエアバッグもない暴れ馬 |
| アストンマーティン DB5 | 自社製直6 | 1964年 | 英国・アストンマーティン | 007ボンドカーの伝説 |
こうして並べてみると、同じ「直6」でも時代とメーカーによって性格がまったく違うことがよく分かります。日産のS20型はレース由来の高回転気筒、RB26DETTと2JZ-GTEはチューニング文化を象徴するターボユニット、BMWは「滑らかさ」を追求し続けた系譜、英国勢は自社製エンジンへのこだわりを貫いてきました。「直6だから同じ」ではなく「直6だけどこんなに違う」ところが、聴き比べの醍醐味です。
GT7の直6車19台を1台ずつ紹介
🇯🇵 日産(8台)
スカイライン2000GT-R(KPGC10・ハコスカ)は、S20型と49連勝で「GT-R」を伝説にした原点です。後継の2000GT-R(KPGC110・ケンメリ)も同じS20型ですが生産わずか197台。フェアレディZ432(PS30)はハコスカと同じS20型を積む特別なZで、フェアレディ240ZG(HS30)は扱いやすさ重視のL24型と「Gノーズ」をまとった穏やかな1台です。
GT-R NISMO(BNR32)は勝つためだけの限定500台のホモロゲスペシャル。GT-R V·spec II(BNR32)はRB26DETTとATTESA E-TSで国内ツーリングカー選手権29連勝、「ゴジラ」と呼ばれました。GT-R V·spec(BCNR33)は「-21秒の浪漫」でル・マンに挑み、GT-R V·spec II Nür(BNR34)は直6最後のGT-Rとして『ワイルド・スピード』の銀色の個体でも知られます。
🇯🇵 トヨタ(3台)
スープラ 3.0GTターボA(A70型)はグループA参戦用ホモロゲで、7M-GTEU型がトヨタ直6ターボの先駆けです。スープラ RZ(JZA80)は2JZ-GTEを積む、チューニング文化で語り継がれる最後の80スープラ。GRスープラ RZ(DB02)は17年ぶりにスープラの名を継いで2020年に復活した、BMW共同開発のB58型を積む1台です。
🇩🇪 BMW(5台)
3.0 CSL(E9・無印)は軽さだけで勝負したホモロゲモデル。3.0 CSL(E9・バットモービル)は大型ウイングでETCCとデイトナを制しました。M3(E46型)のS54型は「シルキーシックスの完成形」と評される名機です。M4(F82)はM3から独立したクーペでS55型直6ツインターボを積み、M2 Competition(F87)は同じS55型を小さなボディに詰め込んだ「小さな暴れん坊」です。
🇬🇧 英国(3台)
ジャガー E-typeはXK型直6を積み「フェラーリの半額で世界に衝撃を与えた」と語られる、1960年代を代表するスポーツカーです。TVR タスカン Speed 6は自社製「Speed Six」を積む英国の小規模メーカーらしい1台で、ABSもエアバッグもない硬派な作りから「英国の暴れ馬」とも称されます。アストンマーティン DB5は自社製直6を積む1964年式のグランドツアラーで、映画『007』のボンドカーとして世界でもっとも有名な英国車の1台になりました。
19台を見渡すと、日本勢はレースとチューニング文化、BMWは「滑らかさ」の追求、英国勢は自社製エンジンへのこだわりと、それぞれ異なる哲学が見えてきます。気になる車種があれば、各記事でスペックや中古相場、GT7での乗り方も確認してみてください。
直6の「粘りと回転フィール」はハンコンで違いが分かる
直6ならではの「低回転からの粘り」と「ターボが乗ってからの伸び」を存分に味わうなら、ハンドルコントローラー(ハンコン)への投資が効果的です。ここでは「まず必須」の土台と、「あるとより実車に近づく」機材に分けて紹介します。
<まず必須>これがあれば、すぐにGT7で走り出せる
GT7を遊ぶ土台です。
PS5本体・GT7ソフト・ディスクドライブがあれば走り出せます。
さらにハンコンを足せば、直6の粘りとターボの伸びを“足で感じ取る”運転体験に。
<あるとより実車に近づく>足すほど没入感が一段ずつ上がる
ここから先は“より実車に近づく”ための投資。
コックピットで姿勢が決まり、シフトで操作感が増し、VRで視界ごと没入できます。
※機材価格・在庫は時期・モデルによって変わります。最新の金額は各販売店でご確認ください。
GT7の直列6気筒エンジン車について、よくある質問
Q. 直6とV6は何が違いますか?
A. 気筒の並べ方が違います。直6は一直線に6つ並べる形式で、理屈のうえで振動がほぼゼロになるのが特徴です。V6はV字2列配置でエンジン全長を短くでき、コンパクトな車体にも積みやすくなります。
Q. GT7で直6のおすすめは?
A. 頑丈で扱いやすいと言われるRB26DETTやS55型を積むGT-R・M2 Competitionが候補です。低回転の粘りとターボの伸びを体感しやすく、直6らしさを味わいやすい車種と言えます。
Q. なぜ直6は減ったのですか?
A. エンジンが長く前重心になりやすいことに加え、現代の量産車の主流である横置きFFはエンジンルームの横幅に制約があり、長い直6を積みにくいためです。
Q. RB26と2JZはどちらが速いですか?
A. 一概には言えません。GT7ではエンジン単体の性能差より、車両重量・駆動方式・セッティングといった車体側の要素がタイムに大きく影響します。
Q. GRスープラのエンジンはBMW製ですか?
A. はい。GRスープラ RZ(DB02)のB58型は、トヨタとBMWの共同開発によるエンジンで、BMW車にも搭載される直6ターボがベースです。
Q. 直6が「シルキーシックス」と呼ばれるのはなぜですか?
A. クランクシャフトの動きが前後の気筒で打ち消し合い、理屈のうえで振動がほぼゼロになるためです。BMWが自社の直6をそう呼んできたことから広まりました。
GT7の直6車は「滑らかさを守り抜いた贅沢なレイアウト」
最後に、この記事のポイントを3つに整理します。
- 直列6気筒は、理論上の振動をほぼゼロにできる、数少ないエンジン形式。その滑らかさから、BMWをはじめとするメーカーに「シルキーシックス」と呼ばれてきた一方、全長が長くなるため搭載できる車が限られる「贅沢なレイアウト」でもある
- 日本ではS20型からRB26DETT・2JZ-GTEへと受け継がれ、GT-Rとスープラを中心にチューニング文化を世界に広めた。BMWはM30型からS54・S55・B58型へと「シルキーシックス」の系譜を守り続け、GRスープラでトヨタとも交わった
- GT7の魅力は「低回転からの粘り」「ターボの伸び」「フロント寄りの重量バランス」の3点。ブレーキングでノーズを内側に向けてからアクセルを踏む乗り方が、直6車の重さを味方につけるコツになる
日本のレースとチューニングの歴史、ドイツの「滑らかさ」への執念、英国の自社製エンジンへのこだわり。これが直6というエンジン形式の面白さです。時代もメーカーも国境も超えた「直6の聴き比べ・乗り比べ」ができるのは、収録台数を誇るグランツーリスモならではの贅沢と言えるでしょう。気になる車種があれば、上の一覧表と紹介から各車の解説記事ものぞいてみてください。
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